山田寛 この間、国連職員になるためのガイダンスがあって、多くの大学院生が参加していました。そういうところを見ると、日本人も割合に外を向いているのかなという気もしたのですが、マジョリティーはどうなのか。今むしろ内向きになっているのではないかという感じがします。
その理由の一つは、総理府の外交に関する世論調査で、この調査が始まってから二十年ぐらいの中で、経済協力を「積極的にやるべき」という回答が今一番減っているのです。もちろん、今はたくさんやっているから、それから経済的に具合が悪いからそうなのでしょうが、「とにかく減らすべき」というのが一番多くなっているのです。
もう一つは、いじめに関する子供たちの調査で、昔はいじめがあっても「やめたまえ、君たち」と言う生徒がたくさんいた。ところが、この間の世論調査を見ると、自分に害が及ばないように見て見ぬふりをするのがいいという回答が非常に多いのです。
このように民のほうも心配なのですけれども、政府のほうも心配です。僕は小渕恵三前首相はかなり外に開かれた人だと思っていましたが、亡くなってしまい、この間の「二十一世紀日本の構想」懇談会にしても、英語第二公用語化の話があったなという程度で、あのインパクトもそれで終わってしまうのではないかと心配をしているのです。経済でお金が出せないのであれば、田中明彦氏(東京大学教授)が言われる「言力」、言葉の力とか、あるいは汗とか血で地域秩序、特にアジアの秩序を日本が先頭に立って構築していくという努力を期待したいと思います。