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平野拓也 日本人はむしろ「海岸民族」ではないかという議論がありますが、少なくとも海洋に関する研究活動の面では最近、必ずしもそうではないと思っております。例えば、私ども海洋科学技術センターの研究活動の範囲は、南北太平洋はもとより、夏期にはべーリング海峡を越えて北極海に入りますし、はるかインド洋や大西洋に遠征して海底の調査をやるというように、非常に外向きのマインドで「海岸」国家を脱しつつあります。これは、最近の研究の内容や性格上そうならざるを得ないわけです。

こういう観点から見ますと、海というのは狭くなりつつあるなという感じが強くします。先ほど海洋法の話がありましたが、経済水域というものが設定されたので、われわれの研究活動は、公海上であっても他国の水域に入るのにいちいち許可が要る。特に海底調査研究をやろうとすれば、大変な困難を伴います。それは、もちろん資源の問題や軍事的な問題に絡むからであります。今日、旧原子力船「むつ」―現在は海洋地球研究船「みらい」という世界最大の研究船になっていますが、これが日本の海洋研究船として戦後初めてオホーツク海に入っています。これが千島列島を通過するときには、シービームという海底を測る装置は使わないという約束で、ロシアの監督官の監視下で活動しております。また、われわれは、太平洋の赤道域でエルニーニョなどの観測のためのブイを浮かべたり、いろいろなことをしておりますが、他国の水域に入るときには非常に煩雑な手続きが要るということで、まさに海は分割されているという感じが非常に強いわけです。

 

 

 

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