戦後の日本では、リスクを背負う生き方というのは歓迎されなかったのです。これが「海洋国家」型ならば、一発大きいのを狙ってやろうという気概を称揚するのかもしれませんが、実際はそうならなかったわけです。
この十年は、日本にとって試練の時期であったかもしれませんが、私は、新たな可能性を見ているところです。はっきり言えば、終身雇用や年功序列型賃金といったものに支えられた「大陸国家」型メンタリティーが遂に崩れて、「海洋国家」型のメンタリティーが前面に出始めてきているのではないかということです。象徴的なのは、例えば野茂英雄とか中田英寿といった人々です。彼らは、自らリスクを背負って活躍の場を海外に求めたわけです。
私は、これからの日本の国際戦略で大事なことは、この野茂英雄型、中田英寿型の人材を養成し、どしどし世界に出していくことだと思っています。日本が「海洋国家」というならば、それに相応しい「ハイリスク・ハイリターン」志向の人材を揃えていくことが、大事だということであります。変転極まりない「海」という空間に乗り出すに十分な「進取の気性」、「強靭な精神」を人々が身に付けるための「枠組」が、求められているのです。