櫻田淳 私が海洋国家あるいは大陸国家という言葉に持つイメージというのは、象徴的なものであります。「海洋国家」は、「ハイリスク・ハイリターン」型の人々の生き方を是とする国を象徴し、「大陸国家」は、「ローリスク・ローリターン」型の人々の生き方を是とする国を象徴するということです。陸の上ならば、種を蒔いて草を刈って収穫するというように、決められた通りに行うというスタイルで生活を維持できます。しかし、海の上ならば、網を海中に入れたからといって確実に魚が獲れるわけではないし、嵐に巻き込まれれば命を落とすこともあります。そういう意味では、リスクは高いのですが、魚群を捕まえれば一挙に「大漁」ということもあるわけです。
この考え方からすると、戦後の日本は「大陸国家」型の色彩が強かったのではないかと思われます。例えば、「一流の大学、一流の会社」という風潮は、私には、「ローリスク・ローリターン」型の生き方を奨励していたように思います。一流の大学を出て、一流の会社に入ってしまえば、よほどの間違いを犯さなければ定年までは生活が保障される。こういう発想は、「上昇志向」というよりは、「安定志向」というべきものです。