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しかし、その富ゆえに、テュロスは新バビロニアの王ネブカドネザルにより、十三年間包囲されたすえ、破壊されてしまいます。紀元前五七三年のことです。

これより先、前八一四年、テュロスの王女エリッサは王位の継承をめぐって兄(一説には弟)のピグマリオンと争ったあげく、遺産を船に積んでテュロスを脱出、アフリカの北岸に達して、そこに都市を建設しました。それがカルタゴです。その場所は、現在のチュニジアの首都チュニスの近郊、「ビュルサの丘」とされています。ここは、地中海貿易にとってこの上ない地の利を得ていました。彼らはさっそく貿易に専念し、仲介を請け負い、富を蓄積していくことになります。

 

ところで、海に乗り出していくには、それなりの条件が必要です。まず、造船技術、操船術、天体観測による航路の確認、潮流に関する知識、風を利用するための研究…。

海洋民族は必要に迫られて、こうした科学知識を自然に手に入れ、それがやがて彼らを強大な勢力へと成長させることになります。軍事に結びつけば、そのまま強国となり、敵を圧倒することができる。つまり、海を制した者が世界を制するようになるわけです。歴史はそれを数々の例で語っています。

 

 

 

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