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二. 地中海の海洋民族

 

たとえば、ギリシア文化が花開く以前に、エーゲ海では、すでに独特な海洋文明が繁栄を謳歌していました。クレタ島を中心とするミノア文明です。迷宮として有名なクノッソス宮殿がこの島に偉容を誇っていたのは紀元前十七世紀といいますから、三千数百年も前のことです。ホメロスの『オデュセイア」には、「海に囲まれたこの島には九十の町があり、住民は数えきれないほど多い」と記されており、その中心がクノッソスで、ミノスという王が君臨していたといいます。

彼らはクレタ島だけでなくエーゲ海全体を支配しており、活発な交易を行っていた海の民でした。このミノア文明がいかに深く海と結びついていたかは、クノッソス宮殿の壁面に残されているイルカ、イカ、タコなどの海産物の絵が語っています。クレタ人はこれら海産物やブドウ、オリーブ、毛織物などの交易により、長年にわたってエーゲ海を支配していましたが、サントリー二島(テラ島)の火山噴火によって、紀元前一四〇〇年ごろ崩壊していきます。この島の遺跡には見事な「船団図」が描かれていて、いかに彼らが海洋民族であったか、その図からもうかがえます。

そのミノア文明を引き継いで登場するのがミケーネ人です。彼らはギリシア本土から、つぎつぎにクレタをはじめとするエーゲ海の島々に進出して、クレタ文明を摂取しつつミケーネ文明を築き、これがギリシア文明の素地をつくることになります。

 

 

 

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