――カバラ学者の説によれば、世界史は巨大な鯨、リヴァイアサンと、同じく強大な陸の怪獣で、雄牛あるいは象として考えられていたビヒモスとの間のたたかいである。……(生松敬三・前野光弘訳)
そしてシュミットは、その実例をギリシア、ローマ、ヴァイキング、ビザンチン帝国、ヴェネチアなどにとり、やがて十五、六世紀の大航海時代を現出させる主役、スペイン、ポルトガル、さらに彼らにかわってその地位を奪ったオランダ、イギリスの世界帝国までの歴史をたどってみせます。
この『海と陸』というシュミットの著作は、ごく短い論文、小冊子のようなものですが、たいへん示唆に富む考察で、大いに教えられるところがありました。そこで、私もシユミットに倣い、海からの視点で世界史をふり返ってみたのですが、確かにその通りなんです。シュミットは言及しておりませんが、ギリシア、ローマ以前に、すでに海を舞台として活躍した海洋民族が、いい実例を提供してくれています。