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第二回の「情報革命時代の海洋国家構想」においては石井威望メンバーから「二十一世紀型の国家と海洋を考える場合、ネットワークという新しい『海』にまで海洋の定義を拡張する必要がある。『i海洋国家構想』では、ゆらぎを許す方向で『複雑系』の理論を応用することが不可欠である」との問題提起がなされた。第三回の「北東アジア地域秩序の展望と日本の構想」においては岡崎久彦メンバーから「北東アジアの安全保障を考える場合、ほとんど唯一最大の問題は台湾問題に限られてきた。このような中で台湾が持つ戦略的・地政学的重要性は大きい」との問題提起がなされた。また最後の第四回の「海洋国家日本の構想:世界秩序と地域秩序」においては太田博メンバーから「『北東アジアに位置する四面環海の海洋国家』『非欧米で最初にかつ自力で近代化した国』というアイデンティティを持つ日本は、世界秩序レベルにおいて南北問題解決への寄与、超近代文明形成への貢献をすべきであり、地域秩序レベルでは東アジア地域の開放的協力体制強化への寄与を行うべきである」との問題提起がなされた。各回とも、問題提起のあと、参加者全員による賛否両論の立場から厳しい議論の応酬がなされた。

このような第三期「海洋国家セミナー」の四回にわたる「自由討論会合」の成果を、集大成する形でとりまとめたものが、本書『海洋国家日本の構想:世界秩序と地域秩序』である。とはいえ、本セミナーの活動は、メンバー間の討論をつうじて一定の方向感覚を模索し、形成しようとするものではあっても、メンバー間において特定の一義的な結論の合意を取りつけることを目標としたものではない。

 

 

 

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