本書の各章の前段部分は、右に紹介したような各回の議論の問題提起のエッセンスをとりまとめたものである。これに対して各章の後段部分は、このような問題提起に対する他のメンバーの反応を「自由討論」という形でとりまとめたものである。そこから「海洋国家日本の構想:世界秩序と地域秩序」という投げかけられた問題に対する日本の知識人の一つのダイアレクティクス(弁証法的対話)の姿を読者の皆様は垣間見ることができるのではないかと考えている。
なお、本セミナーのメンバーから成る「海洋事情視察団」は、十月五日(木)から七日(土)にかけて沖縄を訪ね、尖閣諸島の視察などを通じて、南西海域における海洋交流の歴史や現在について現場で学ぶ機会をもったことを申し添える。
なお、「海洋国家セミナー」の三期三年にわたる「自由討論会合」の活動成果は、本書の刊行をもって一応の区切りとすることになるが、二十一世紀における日本の大戦略のあるべき姿を国民の皆様とともに考えてゆくうえで、いささかでも寄与するところがあれば望外の幸せである。