三年間にわたるわれわれ「海洋国家セミナーグループ」の作業は、第一年度において「西洋でも東洋でもない日本」としてのアイデンティティを確認し、第二年度において「内向きの島国ではなく、世界に向かって開かれた海洋国家」としての日本の大戦略を構想した。これらの議論の成果を踏まえて、さらに「日本の追求すべき世界秩序と地域秩序」に思いを馳せたのが、第三年度となる本年度の議論であった。外の世界に関心を払おうとせず、世界の相互連関のなかにおける自国の位置や役割の自覚が欠落しがちなのが、これまでの日本と日本人の宿痾であった。今日の日本と日本人もまたこれまでと同じ過ちを繰り返しつつあるのではあるまいか。
われわれ「海洋国家セミナーグループ」は、日本と日本人のアイデンティティを最終的に「北東アジアに位置する四面環海の海洋国家であること」と「非欧米で最初に近代化を達成した民族であること」の二つの事実のなかに求めた。この二つの事実は相互に密接に関連しており、相俟ってこれからの世界と地域における日本と日本人の進むべき道を示唆しているように思える。すなわち、日本と日本人は非欧米の発展途上諸国民に希望をあたえる存在であるとともに、近代化(それは欧米化でもあった)のマイナス面が露呈しつつある人類文明の未来に対して新たな選択肢(超近代文明の可能性)を提示する存在でなければならない。