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したがって今後の安全対策としては、第一に浸水の原因となる船体損傷を防止することであり、第二は浸水区画を最小限に抑えることである。

第一の対策については船体の構造強度の面から述ベられるべき性質のものなので、ここでは第二の対策について以下に述べることにする。

遭難起重機船の居住区より船首部分は左右のNo.1バラストタンクを除くと単一区画になっており、この区画が損傷時の復原性を考慮するにあたり大きすぎることは明らかであった。

したがって損傷後も復原性を確保するためには、この大区画の細分化が必要である。

どの程度まで区画の細分化を行うかについては、浸水後の復原性についての基本的な考え方により異なるが、ここでは船舶区画規定に準拠して下記の条件を満足するものとする。

1] 舷端が没水しない。

2] GMが正である。

3] 傾斜角度が7度を越えない。

今後、同様のあるいは類似の船体区画構造を有する起重機船が被曵航行する場合には前記のごとき安全対策を実施することが事故防止上極めて有効であると考えられる。

(3) 回航前の被曵物件の事故防止対策

(a) シャース(二股式のジブ)

起重機船の回航で最も大切なことは、シャースの動揺による事故を防止することである。今までの事故もシャースの動揺に起因することが多い。外海の安全な回航を達成するためには、次のいずれかの方法を施工する。

1] シャースを取外し、甲板上に積載して固縛する。

2] シャースを低く倒し、支柱又は架台で支えて固縛する。

3] 本船をサブマーシブルバージに積載し、バージ上でシャースを支えて固縛する。

(b) GMと動揺周期

起重機船は一般にGMが過大で動揺周期が短いので動揺による慣性力が大きく、シャースも起き上がり易く危険であるため、適正な乾舷とトリムを保持できる範囲内で十分なバラストタンクを持ち必要な張水を行えるようにする。

(c) 堪航性の保持

被曳船は回航中の堪航性保持のために、十分な点検を行う必要がある。

 

 

 

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