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β3アドレナリン受容体遺伝子に変異を持っている人の割合が多いのは、北米大陸のピマ・インデイアンです。ピマ・インデイアンはアリゾナ州南部に居住するグループとメキシコのシェラマドレ山脈に居住するグループとがあります。この二つのグループはもともと同じ種族であり、共通の遺伝的素因を持っています。アメリカ連邦政府の先住民族への補償政策によって、アリゾナのピマ・インデイアンは生活を保証されるようになりました。1970年代のことです。彼らの生活はそれまでの農業生活から消費カロリーが少ない生活へと一変し、食生活においても典型的なアメリカ式である高カロリー・高脂肪食に転換したのです。その結果、またたく間に彼らは、アメリカ本土で最も肥満者の多いグループになってしまいました。

一方、メキシコに現在でも住んでいるピマ・インデイアンは農業と酪農を営み、脂肪摂取量はアリゾナのピマ・インデイアンの半分以下であると言われています。彼らの場合は肥満者の割合はアリゾナのピマ・インデイアンよりずっと少なくなっているのです。これらのことから分かることは、肥満という現象は確実に遺伝的な影響を受ける一方で、環境的影響も非常に強く受けるということです。

 

さて困ったことに、日本人にも確実に肥満者は増えてきています。30歳代の男性の3人に1人は過体重か肥満、40〜50歳代では4割近くが過体重か肥満であることが報告されているのです。ここで、戦後50年間の日本でいかに糖尿病患者が増加したかについて述べ、その原因について触れることにします。

 

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