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基本理念は「売らない・汚さない・乱さない・壊さない・生かす」であり、具体的には「美しい島を守る・秩序ある島を守る・観光関連業者の心得・島を生かすために・外部資本から守るために」といった項目に分け、それぞれ島民が守っていくこと、心得ていくことを記しているほか、重要無形民俗文化財の種子取祭、伝統的産業品ミンサー等の保存活動などにも取り組んでいる。

憲章が制定された経過は、復帰以前の昭和30年代から全国に紹介され、島外者が大勢訪れるようになるとともに、島民自身も次第に島の良さを自覚するようになったところに、1972年当時折りからの高度経済成長期を迎え、本土大資本によって島の土地が買収されるようになった。そこで島民を中心に多くの関係者が呼応して「竹富島を生かす会」が結成され、強力な阻止運動が展開された結果、土地の買収は島の20%ほどにおさまり、具体的な進出計画は凍結された。

そして「妻篭宿住民憲章」を参考に日本弁護士連合会有志により提案されたが、この時は住民総会(年1回)において決議されなかった。

しかし10年後の昭和57年、再度大手資本による進出計画が再燃した。そこでこれを阻止するため、1982年に全国街並保存連盟にも加盟、同連盟による支援も受け、計画を阻止させた。同時にその頃から、県や文化庁から島特有の瓦屋根や珊瑚礁で出来た道などの街並み全体が評価され、集落景観保存調査等が実施された。昭和60年前後のバフル経済期を迎えるとともに、島外からの移住者により、従前とは異質な島の特性や歴史性を無視した、島には不似合いな建物が相次いだ。

そこで昭和61年3月には280名ほどの住民総会において満場一致で決議された。

なお西表島を代表するイリオモテヤマネコ(特別天然記念物指定)などの豊富な自然に対して、竹富島の資源は伝統文化(街並み等)にあり、島の集落部分が文化財保護法に基づく国選定・重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

 

【竹富憲章】

前文

われわれが、祖先から受け継いだ、まれにみるすぐれた伝統文化と美しい自然環境は、国の重要無形民俗文化財として、また国立公園として、島民のみならずわが国にとってもかけがえのない貴重な財産となっている。

全国各地ですぐれた文化財の保存と、自然環境の保護について、その必要性が叫ばれながらも発展のための開発という名目に、ともすれば押されそうなこともまた事実である。

われわれ竹富人は、無節操な開発、破壊が人の心までも蹂躙することを憂い、これを防止してきたが、美しい島、誇るべき故郷を活力あるものとして後世へ引き継いでいくためにも、改めて「かしくさやうつぐみぅまさる」の心で、島を生かす方策を講じなければならない。

われわれは今後とも竹富島の文化と自然を守り、住民のために生かすべく、ここに竹富住民の総意に基づきこの憲章を制定する。

 

1. 保全優先の基本理念

竹富島を生かす島づくりは、すぐれた文化と美しさの保存をすべてに優先されることを基本理念として、次の原則を守る。

「売らない」 島の土地や家を島外者に売ったり、無秩序に貸したりしない。

「汚さない」 海や浜辺、集落など島全体を汚さない。また汚させない。

 

 

 

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