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第2章 諸外国におけるエコツーリズムへの取り組み

 

第1項 その概要

 

途上国を中心に自然環境や生物の多様性には恵まれているが、経済的基盤が弱い故に、自然環境を犠牲にした地域開発を優先するか、自然環境や生物の多様性の保全を優先するかの選択を迫られている場合がある。そこで近年は、途上国の経済発展対策として、自然環境を持続的に活用するエコツーリズムが取り入れられるようになり、急速に普及している。

その場合、エコツーリズムの概念を、周辺地域住民の伝統的な生活様式も含めた地域生態系を破壊せずに、ガイドを伴って自然を観察・体験し、地域はツーリストの来訪により経済的効果がもたらされる形態としている。

エコツーリズム、ネイチャー・ベースド・ツーリズム、グリーンツーリズムなどをインターネットと文献から検索すると、全世界では1,270のサイト(2,017件)でエコツーリズムが行われており、そのうち17%が国立公園地域、5%が世界遺産地域で行われているという。

最も多いのは中南米で、次いで北米、中近東、アフリカ、欧州、ロシアで、各地域で各々230〜300のサイトが活用されている。ただし欧州やロシアでは、国立公園や世界遺産地域は少なく、野生生物とのふれあい型が最も多く(1,211件・60%)、次いで陸上活動体験型が384件、(19%)、海洋活動体験が307件(15%)、伝統文化とのふれあいが70件(3.5%)、自然環境体験型29件(1.4%)、参加体験が16件(0.8%)となっている。なお海洋活動型は中南米が最も盛んで40%、北米では30%を占めているという。

 

I オーストラリア

オーストラリアを訪れた370万人のうち日本人の85%以上、欧米の70%以上が特徴ある自然をあげているように(1995年)、日本人観光参加者の3分の1は、自然の中で野生ペンギンを見学できるフィリップ島を訪れており、北部オーストラリアのケアンズは、グレートバリアリーフと熱帯雨林の観光で急速に発展した。エコツーリズムの先進国といえる。

エコツーリズムの年間生産金額が約2億5,000万ドル、600人の経営者と正規の雇用者とアルバイター合わせて11,500人がいる。

1] グレート・バリア・リーフ(世界遺産地域)での経済効果

1991〜92年の推定参加者は220万人で、観光参加者による直接支出は6億8,200万ドルで、釣りやボートの乗船を含めると7億7,600万ドル、全体の支出を含めると10億8,000万ドル、間接的な支出まで含めると11億5,900万ドルである。

因みに、商業的な釣りによる直接的な年間収入は1億2,800万ドル、参加者の間接的な支出を考慮に入れれば合計で2億5,600万ドルである。

なお海洋公園協会の運営費は1,800万ドルで、連邦政府とクイーンズランド政府からの寄付金は合わせて300万ドル、その他からの収入は230万ドルであった。さらに同協会とオーストラリア海洋研究所による年間調査費は1,940万ドルであった。

ツアーオペレーターは保護管理計画費と審査許可費として7万5,000ドルを支払っている。商業用船の参加者は1ドルづつ料金を払っているが、年間収入は約100万ドルを期待されている。

2] ニンガルー海洋公園

巨大なバリアリーフと深海を含む地域で、スキューバダイビングやスノーケリング、ホエールウォッチング、さんご礁視察など15以上のツアーが運営されており、1990〜91年公園のあるガスコイン地域への参加者は22万8,000人で年々増えている。旅費を除いた観光参加者による支出は5,760万ドルであった。

 

 

 

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