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IV 体験漁業の現状について

 

最近は、参加者獲得についても、互いに顔見知りとなるにしたがって参加者と漁業者が直接交渉するようになり、だんだん漁協を通さなくなっている。漁協としては個人が努力する方が良く、組合が主体としてやると組合頼みとなり、個人の努力が薄れることになりがちになるとしている。

また今日では、リピーターと新規が半分半分となっている。その主な理由は、バブル時代から派手なイベントを狙わず、地道に家族旅行を対象としたことにある。そのため、今日では孫に連れられておじいさん、おばあさん、両親が一緒に訪れる家族の慣例行事となっており、そうした人たちによって口コミで地道に参加者が増え、双方にとって身の丈にあった安定した事業となっている。

さらに近隣では、最近まで大きなホテルや観光業界と契約して大規模にやっていた所があるが、近年ホテルが潰れたり、旨くいかなくなったりすると、その影響を直接受け大きな打撃を受けている所もある。しかし当地では、これまでそうした路線をとることなく、体験漁業を家族経営で行なっており、大きな設備投資もせず、その対象者を家族や中小会社としてきたため、不景気といえども、おいしい魚を年に1,2度、適正な価格で楽しみながらという堅実な路線は良いにせよ、悪いにせよ、景気の影響は余り受けていない。

こうした結果、参加者のなかには、おいしい魚を食べることができ、家族中で魚を食べるようになった。嫌いだった魚が好きになった。みんなが包丁を持つようになり、魚が料理できるようになった。あるいは福山市にある内海町のアンテナショップで魚を買うようになったなどという声がたくさん寄せられている。総体的にすばらしかった。良かった。また来たいというような好意的な意見が多く、なかに苦言を呈する場合でも、前進的な善処策まで書いてくれる人が多かった。

今後の水産振興策としても、漁業が都市交流を推進していくことが極めて重要かつ有意義であることが判明した。

次に、瀬戸内海の魚は少量多品種なため、大手スーパーには嫌われていたが、都市交流やアンテナショップを実施することにより、従来、魚市場(セリ)では全く扱われず、1箱何十円、何百円といった単位で取り引きされ、蒲鉾材料にしかならなかった雑魚の価値が大いに高まった。また福山市周辺からの参加者は、定置網体験で食べた味が忘れられず、参加した人の大半が時々アンテナショップに買いに行くという。

なおアンテナショップは、町が1,100万を出し、福山市に建設したもの。魚の販売として、直接そこで収益に結び付くまでには至っていないが、魚のPRや普及の一環として大変有意義なものとなっている。また山間部の神石町(友好縁組町)と一緒に運営しているため、福山市民の人気は高い。特に少量多品種の魚介類が多い定置網や底曳き網漁の漁獲物であるシラサヨリやカニ、グチなどは、それなりの高値で売ることが出来ている。

 

 

 

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