また漁業者は一人(1経営体)あたりつぼ網を3、4カ統持つため、組合全体としては70〜80カ統あり、定置網経営体25のほぼ全員が、体験定置網に参加している。実施当日は、各人が持分の網のうちから1つだけを対象にして網を揚げ、残りの3〜4カ統は、通常通り早朝に水揚げをする。
定置網体験は、沖合い12kmの愛媛県越智郡弓削島付近に設置されており、漁港を午前9時30分に出航し、12時頃に帰港する。のち昼食として漁協事務所わきの高台(以前漁協が設置した施設)で、漁協婦人部が準備した船頭料理を食べ、午後2時頃に解散する。参加費は中学生以上の大人は6,500円、子供(小学生)は3,000円で、漁獲物はウマズラが20%、トラフグ12%、イカ、タイ、カレイ、スズキ、サワラ、ヒラメ等々となっている。
III 参加者からの意見
当初は大阪、東京など遠方からも問い合わせがあったものの、宿泊施設など受け入れ体制が整っていないため断ることもよくあったが、現在は参加者も安定し、福山、広島、岡山などの広範囲に及び、時に大阪などからも来訪する。それでも依然として交通時間の都合などから宿泊施設の完備についての要請が強い。
しかしここに至るまでには、事業を始めた当初のように、それなりに手づくりで素朴であればいいという時代ばかりではなく、洗練された方向への転換が求められたこともあり、慣れによる緊張感の不足から、新しいイベントを生み出すエネルギーが減少してきた時もある。
そうした時には、常にアンケートを実施し、その方向性を探った。そして事業実施後に検討会を行ない、年を経るごとに、対策などを皆で考える習慣となり、案外楽でスムーズな事業となっているようであった。
そこでこれまで実施したアシケートの回答の中から、様々な意見を抽出、整理してみることとする。
(問1) 定置網体験に参加してどう思ったか。
よかった37人(78%)、まあまあ4人(9%)、つまらなかった4人(9%)、無回答2人(4%)。前年度はよかったが80%とほぼ同じであったが、それまでは「つまらなかった」は0人であったのが、この年は9%もあった。それだけリピーターがあったということでもあるが、観せる要素に変化がなく、退屈した結果でもあると分析している。
―船上における説明の大切さ―
・網が揚がった瞬間、魚が跳ねる光景に興奮した。魚の名前や旬の魚を教えて欲しい。
・一緒に網を曳くことを謳い文句にしながら、定置網漁業の方法や漁場についての説明がない。また参加者に船上での技術的説明をしなかったために、まごつくことが多く、結局手馴れた船頭が一人で網を揚げてしまった。これが不満ということで、次年度は参加者に簡単なオリエンテーリングを行なったところ大変喜ばれた。
・獲れた魚は別途に買ってもらうよりも、お土産付きということの方が割安感がある。そこでお土産付きとした。それでなくても料金がガソリン代や人件費というよりも、料理だけに対する値段として理解されやすいことを思えば、これ以上の値上げは難しい。しかし諸経費についても説明することは必要となろう。