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II 島の海遊活動について

 

笠岡市の特徴は、東には岡山県倉敷市、岡山市、西には福山市といった大消費地を控えるという好立地条件があるため、多くの島を舞台にした体験型漁業の推進がある。

その動機は、地場産業の石材加工や石採掘の不振、大企業の工場縮小などの落ち込みや第一次産業の不振等々による過疎化、高齢化など、他の地方都市と同様な状況が見られるなか、これまで十数年間にわたり数々の島おこしや地域振興策を模索した結果、島では漁業や文化を中心にするしかないという極めて当たり前な原点に戻ったといえる。

そのためにはまず、いかに海に来てもらうかが大きなテーマとなった。参加者に興味を持たせ、楽しんでもらうためには安く、非日常性が体験でき、PR段階でも臨場感を持たせるなどの目標を掲げ、これまでにないPR作戦を展開した。漁協を中心に、島の観光業者や公民館などと連携を図りながら、それぞれの役割分担を明確にして事業立案を行なった。

こうしたことが比較的スムーズに可能となった大きな理由は、20年有余にわたる漁協青年部の努力があった。そしてその原動力となったのが、島おこしの一環としてこれまでの様々な暗中模索の体験であった。当時はバブル経済が始まる前で、島も隆盛であったため、島民の危機感も薄く、民宿ひとつを始めるにも周囲の賛同を得るになかなか困難な状況を呈し、イベントなどを行なわなくても生活ができたなかでは、先導的なリーダーの活動は、理解されることさえ稀であったという。漁村或いは漁協組織のなかでは、こうした先導的リーダーを大切にしない風潮があるため、なかなか人材が輩出しないのも現状で、地方(漁村)の閉塞状況も詰まるところ、人材不足と各種組織の硬直化に尽きるという。

まだ漁業者や島民の危機感が薄いなか、これからは直接消費者の声が聞くことが大切だと漁業者が街へ出て勉強の場を設定、なかで漁業体験、島で思う存分遊びたいという意見が出た。それならば先ず一度、そうしたことをやってみようということになり、自分達の知り合いの友人知人を呼び、遊んだなかから出てきた企画であるため、当初は先ず、よその人達に笠岡を知ってもらうこと、誰でもいいから観光客を呼び込みたいということが先に立ったため、採算的には余り芳しくはなかった。

今日やっと島の人たちに危機感が芽生え始め、島の将来を考えるひと達が出てきた。やっと関係者の間に、話し合いの土台と気持ちが生まれてきたといえる。

その結果現在は、笠岡市により島振興対策の基本計画が、島ぐるみで体験型漁業を推進することになった。

また以前は、海洋レジャーとのトラブルは様々あったものの、漁業者側のしっかりした指導と体験型漁業の受け入れなどの体制整備が、トラブルを解消したという。

なお島嶼における漁業体験の一例として、底曳き網は7人までで55,000円(一人増えると3,000円、最大12人)、建て網は6人までが6万円、つぼ網は10人までが10万円。釣り筏は一人2,000円。地曳き網は35,000円(20人以上で実施)、潮干狩りは大人1,000円(2kg)、子ども500円(1kg)で行なわれている。

 

III 白石島の事例

 

白石島は市内の港から16kmと比較的本土に近く、笠岡港から高速船で20分の所にある。島には1日4便の定期船と7便の高速艇が就航している。世帯数は386戸、人口913人、幼稚園と小中学校があり、B&G海洋センターもある。農家数は42戸(うち専業が20、野菜・蜜柑・芋などが主産物)、漁家数は34戸(18戸が専業で、底曳き網、定置網、海苔、フグ養殖などが主産物)、他に石材採掘業、石材加工業が12戸あるが、主要産業は漁業と観光産業である。

 

 

 

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