いずれにしても他都道府県の修学旅行生や先生方にとっては、沖縄県の歴史・文化・自然は、全ての面において特異的で、異質で、それ故に魅力的に映っていると思われる。
そうしたことから、全国の都道府県から沖縄県への平和・文化学習を中心とした修学旅行は盛んに行われている。
しかし数年前から、この沖縄県への修学旅行において、環境学習の積極的なプログラム化(アプローチ化)という変化が見られるようになった。
特徴的な事例としては、平成10年(1998)に、神奈川県の翠嵐(すいらん)高等学校の要望に応えて、県内で初の赤土(海域への土砂流入による海域生態系破壊問題)学習とイノー(サンゴ礁の浅い海)学習が、体験ダイビングと合わせて与那城村伊計島において組織的に実施された。
参加した先生方や生徒の評価としては、サンゴ礁の島の豊かな生態系と地域住民の営みを考える環境学習ツアーは、遊興的雰囲気の多い体験ダイビングと同等の高い評価を得たとのことである。当初、マリンスポーツ体験のみが用意されていたが、引率教員が生徒の希望を受け入れて、赤土学習プログラムの提供を旅行会社に求めたために、県内有識者による「エコツーリズムデザイン研究所」が組織され、プログラムの作成、役割分担、テキストの作成など、伊計島の海洋環境プログラムが実現した。
この修学旅行を担当した国内大手旅行会社横浜支社の企画担当班に対して、後日、同社内において社長賞が贈られたそうである。その後、同研究所で作成されたテキストが、他の修学旅行や体験エコツーリズムで参考にされたり、他の旅行会社も県内大学の地理学専攻の先生が講師について赤土学習会を実施している。(http://www.pref.okinawa.jp)
さらに、関東のある高等学校においては、先生方のご好意により自校図書館内に沖縄コーナーを設け、積極的な沖縄関係の資料収集を行い、普段から沖縄関係の図書に触れる機会を設けるとともに、修学旅行に出発する半年以上前から、各生徒がグループ別にテーマを設定して個別学習会を実施し、旅行日程、訪問先の依頼の手続き、事前準備の学習はもとより、インターネットによる資料収集を行っている。
同校の修学旅行では、旅行参加者全員が沖縄関係全般を学習する全体日程と、個別日程に分けている。
特に、個別日程では引率の先生が付くことなく、生徒自身で作った日程に基づいて、赤土問題の直接的な被害者である漁業者に対する面談、沖縄県衛生環境研究所赤土研究室、沖縄県水産試験場、沖縄県庁環境部局への聞き取り調査などを行うとともに、国頭村の森林内での生物調査、恩納村での体験漁業、あるいは恩納村漁協の職員と同行して海域環境調査を実施したり、体験ダイビングなども行っており、グループ毎にバラエティに富んだものとしている。
後日、帰沖後に修学旅行のレポートをまとめ、学園祭などで発表会を開催したり、訪問先への礼状とともに同レポートを添付したりすることで、修学旅行の全行事を完了させている。
現在、上記の様な動きは各地で見られ、環境学習に対する需要の拡大を示すものとなっており、旅行会社をはじめとする関係者は、新規開発事業として大きな期待を持っており、「環境学習を含めた修学旅行」と「エコツーリズム」は表裏一体の関係にあると言える。