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他方、沖縄県企画開発部発行の「平成8年度(1996)の県民所得統計」によると、観光収入は3795億円で沖縄県外からの受け取り額約2兆2224億円のうち約17.1%を占め、沖縄県外からの財政移転に次ぐものとなっており、石油製品の2.9倍、米軍関係の受け取り額の2.2倍に達するなど、沖縄県の経済にとって極めて大きな位置を占め、沖縄県経済を支える主要な柱となっている。

しかし、この沖縄県観光の大きな特徴の一つして、旅客60名を一つの単位として、バス単位で県内の観光地やみやげ品店を周遊しながら移動することから、みやげ品店、ホテルなどの各種観光施設の受け入れ状況が「ワンバス(60名/バス1台)」単位で企画検討されている。そうしたことから観光の質よりも、量をこなし、低価格のサービスが提供できるように工夫されている所が多く、大量に観光客が移動するマスツーリズムの見本地域とまで言われ、小人数を主体とするエコツーリズムは、近年までは、話題に登ることも殆どなかったようである。

 

II 修学旅行とエコツーリズムの類似性

 

近年の入域観光客の増加傾向に寄与しているものとして「修学旅行生」がある。

首都圏の公立高等学校が平成4年(1992)に航空機の使用を解禁して以来、他都道府県からの修学旅行生も年々増加し、平成11年(1999)には約26万人、1373校を記録し、毎年毎年過去最高を更新している。

この修学旅行の増加により、多量の観光客を観光、リゾート地域で見学や買い物をさせる。安価で、質(内容)をあまり重視しないといった従来型の休息型観光を中心とした沖縄観光とは一味違った形で、いかに修学旅行の学習効果を発揮させるかといった視点が新しく導入され、これまでとは大きく異なった展開を見せている。

なお多くの高等学校の修学旅行先の選定条件は、平和学習・文化学習・環境学習の何れかが可能な地とされている。

この選定条件を沖縄県の地域特性とあわせ見てみると、以下の通りである。

平和学習には、日本国内で唯一地上戦を経験し、日本軍兵士、米国軍をはじめとする連合国軍兵士、沖縄県民、韓国人など多くの第2次世界大戦の戦没者名を刻む平和の礎やひめゆりの塔などを見学し、そうした戦禍を研究する。また第2次世界大戦後に日本国から施政権を分離され、米国による統治が行われ、軍票(B円)と米ドルを使用しながら日本国へ復帰するために多くの運動が起こった琉球政府時代の異民族統治時代を勉強する。

文化学習としては、日本国に一番遅く併合された琉球王朝や首里城・紅型・漆器などの周辺技術をうまく組み合わせた豪華な王朝文化の遺産を学ぶ。

環境学習としては、全国で唯一の亜熱帯島嶼県で、東洋のガラパゴスと称される沖縄県の豊かな自然、コバルトブルーのサンゴ礁の浅い海を陸上からの赤土などの土砂流入による環境破壊、オニヒトデによるサンゴ食害や高水温によるサンゴの白化現象などを学習することが行なわれている。

さらには復帰後の急速な開発などによる環境・経済・社会問題の象徴的な事件、事故がある。日本人としては少し違和感のあった元ボクシング世界チャンピオン具志堅用高氏、歌で世界平和を訴え続ける喜名昌吉氏、あるいは基幹作物サトウキビの年間生産額より多いCDの年間売上高を記録した安室奈美恵さんや人気の絶頂期に解散するスピード、新鋭のB.B.WAVESなどの若者文化の象徴・人気アイドルを輩出し続ける沖縄アクターズ・スクール、また米国軍人・軍属など(アメリカン)と沖縄県民(アジアン)の間に生まれた子供たち(アメラジアン)の人権問題、子供たちをナンバー1型の日本型偏差値教育から各自の価値観や個性を尊重するオンリー1の教育を展開し、全国から注目されている新しい形の学校としてドリーム・プラネット・インターナショナル・スクールの設立などがある。

 

 

 

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