第9章 先進地事例調査
本調査では、海・沿岸域を活用した総合的活用の国内先進地として、沖縄県、岡山県笠岡市、広島県田島漁業協同組合を選定して、各々の現状や課題などを調査した。
なお沖縄県においては、県の現状と課題、笠岡市では市から見た状況を、田島漁協では漁協から見た状況などについて聞き取り調査を行った。
第1項 沖縄県の現状と課題
I 沖縄観光とエコツアーとの関わり
沖縄県は、わが国唯一の亜熱帯・海洋性気候風土で、海域のサンゴ礁等による分類では熱帯性海域に属し、恵まれた自然景観、独自の文化遺産など魅力的な観光・リゾート資源を有しており、日本国内においては、観光・リゾートの場として、高い実績と評価がある。
沖縄県への来訪は、日本国への復帰前においては第2次世界大戦で戦死した遺族などによる慰霊訪問団が中心であったが、昭和47年(1972)の復帰後は、美しい海を主たる観光資源として大きく発展してきた。
沖縄県の入域観光客数は、日本国へ復帰前の昭和46年(1971)には、20万人台であったが、復帰の年には2倍の40万人台へと増大し、さらに昭和50年(1975)には「海、望ましいその未来」をテーマに沖縄国際海洋博覧会が開催された結果、156万人へと大幅に増大した。またこの海洋博を契機として、国内航空各社による沖縄キャンペーンの開始、昭和52年(1977)の団体包括割引運賃(団体旅行による割引運賃)の実施などにより、昭和54年(1979)以降は、常に180万人以上を堅持し、昭和59年(1984)には200万人を突破した。
その後、民間投資により海浜リゾート施設の整備やリゾート沖縄のイメージアップ、各種イベントが定着したことなどにより着実な進展をみせ、平成3年(1991)の入域観光客数は、沖縄県開発庁の策定した第2次沖縄振興開発計画の目標値である300万人を突破した。さらに、平成4年(1992)の首里城の一般公開やNHK大河ドラマ「琉球の風」の放映により沖縄県に関心が高まり、新規航空路線の開設で入域観光客数は319万人を記録した。
平成6年(1994)には前年を若干下回ったものの、平成7年(1995)からは再び増加に転じ、平成8年(1996)は346万人、平成9年(1997)は387万人となった。
平成10年(1998)は、「サントピア沖縄」「大琉球・まつり王国」などの誘客イベントが充実したこともあり、9月まで22ヶ月連続して月別の記録を更新し、年間413万人と過去最高の入域観光客数を記録した。
観光収入についても、入域観光客数の伸びとともに増大し、昭和47年(1972)には324億円、沖縄国際海洋博覧会の開催された昭和50年(1975)には、1258億円と約4倍の伸びを示している。以後、多少の増減はあるものの順調に増加し、平成10年(1998)には、4,399億円と過去最高を記録している。(観光要覧、平成10年版)