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第7章 海・漁業体験教室のガイドライン

 

第1項 ガイドラインの必要性とその作成

 

・海・漁業体験教室では、地域の自然環境や文化を永く維持、保全していくため、一定のルール(ガイドライン)を設けることが大切である。

・海・漁業体験教室は、その姿勢や理念を明確化し、関係者が共通認識をもつことが必要であり、そのために明文化する。

・ガイドラインには2通りある。参加者に守ってもらわなければならないルールと、地域自身が守っていかなければならないルールである。

・海・漁業体験教室は、安全で事故のないような配慮を施す。

・地域の環境や資源に配慮して、それを維持発展させる方向で作成する。

・自然や文化に触れ合うためには、どのようにしたら良いのかアドバイスを示す。

 

海・漁業体験教室では、無秩序な参加者の流入や行動は、地域社会の秩序破壊や崩壊、あるいは自然環境の破壊などに繋がりかねない。しかし、地域固有の自然環境や文化を永く維持、保全していくためには、一定のルールを設けることが大切である。こうしたルールをガイドラインという。

海・漁業体験教室のガイドラインとは、ある地域で海・沿岸域にある資源・資産を持続的に保護し、地域社会の秩序やモラル、しきたりなどを堅持、運営するために、海レク関係者も協力して貰い、守っていくべき具体的目標や配慮する事項、注意事項、約束事などを示すことである。関係者全員が安心して、楽しく、面白く過ごすための必要最低限の条件、或いは注意事項をさし示すことである。さらにその考え方やそれを通して学習する事柄、そのための手段、手法など、その姿勢や理念を明確にし、関係者が共通認識を持つことが必要である。

そこで共通認識として確認したものを、わかりやすく明文化する。その上で具体的な配慮や、どうすれば地域特有の自然や文化、地元のひと達と充実したかかわり方ができるのか、より楽しい体験ができるかなどを具体化したものとして示すこととする。

さらに自然のなかに身を置くこと、特に海は、周囲が多様な危険性に満ち、事故にあう可能性を秘めている。参加者は慣れない土地やその時の条件で、どのようにして危険や事故から身を守って良いかわからないことが多く、それが原因で当事者間の行き違いも出てくる場合もある。

例えば、海で遊ぼうとする参加者は、ロマンと冒険を求めてくることが多いが、冒険と無謀との違いがわからない人たちも大勢いる。両者はまったくスタンスが異なるものであるが、ときに紙一重のところで事故が発生する危険性が出てくる。そこでそうした場合には受け入れ側から、厳重注意し十分に説明を行う。一方、参加者も素直な態度で指導に従う。こうした関係を保つことが、相互にとって安全で楽しく、良好な関係を築くこととなり、それがガイドライン策定の目的である。

またこれまで地域社会には、住民が長く守ってきた地域固有のルールや習慣などがある。それゆえに、都会の目から見れば、時に時代遅れであったり、矛盾していたり、相反するようなことであっても、それが伝統・伝承であれば尊重する価値がある。

 

 

 

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