日本財団 図書館


第6章 海・漁業体験教室からのメッセージ(憲章づくり)

 

第1項 海・漁業体験教室からメッセージをつくる

 

トラブル防止のための基本は、権利者である漁業者及び地域住民側から、地域特性や個性を重視して基本的なコンセプト(ルール)を作成し、それを参加者側に示していくことであるが、これまで地元から、そうした積極的対策を打ち出すことは余りなく、えてして利用者側からの申し入れやトラブルが発生した後に話し合いをするという後追い的であったために、トラブルも発生しやすく、解決の道も遠かった。こうした理由は、わが国では参加者は神様という概念が強く、提供者から利用者側に指針やルールを提示していくということがなかったためである。

しかし事業を開始した後やトラブルが生じた後に規則や協定などを作るとなると、それが却ってトラブルの原因となることも多く、同時に海レク関係者の掌握もしにくくなる。

このようなことから本事業の場合には、海・漁業体験教室メッセージ(憲章・綱領)を定め、その精神に基づいて、地元側で実施することとする。

そして地元では、関係者と十分話し合いのできる体制(クラブの設立)を整えて、事業の基本方針や凡その活動内容を決めることが事業成功の鍵となろう。それができた段階で、参加者とも話し合いを行い、趣旨や目的、目標などの理解を得て、合意形成に持っていくべきである。

なお広辞苑では、憲章を「1] 憲法の典章、2] 重要なおきて。原則的なおきて」と解説しているが、本事業における「憲章」とは、「内部に対しては共通認識を図り、活動内容のレベルアップをするような指針、活動目標を策定し明確に表明する」ことであり、「外部に対しては事業活動の精神や内容、性格などを高らかに謳いあげる」ものである。

 

≪海・漁業体験教室メッセージとは≫

従来の行政主導型に見られる上意下達式の憲章としないためには、何が必要なのか、これまでのものとは違うものであるという差別化を、参加者にどうすれば印象づけられるかを、文案を検討する上での最大のポイントとした。

必要な条件として、1]わかりやすく、親しみやすいものであること、2]自然とのふれあい、自然環境の保全保護をうたう、3]海を媒介にして多くの人たちが交流する広場としたいなどといったことを内容に盛り込む点を設定して、検討を進めた。

他団体の憲章やきまりなども調べたが、説教調であったり、いわば常識を連ねたものであるケースが多く、中には「…しない」とか「…できない」といった否定形も目立ち、よし!参加してみようという気持ちが起きないものが殆どであった。

そこで今回は、参加者に何を感じ取ってもらいたいか、どんなことを伝えたいかをはっきりと打ち出し、そうした思いや願いを託し、漠然としたものであっても読んだ人に伝えられる、詩のようなメッセージとする方向を決めた。

こうした条件の下で、海・沿岸域にまつわるさまざまな情景を「見る」「聞く」「触れる」「想像する」という五官を通じたイメージで、構成してみた。

なおこのメッセージには、あえて参加者に対する具体的な注意事項などは盛り込まなかった。それはメッセージにつながる形で、各地域の個別事情に応じてつくってもらうことにしていただきたい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION