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或いはマイナス思考として拒絶の方向に考えていくのか。海を抱える漁村社会は否応なく、その対応、対策を迫られている。そうした状況のなかで近年、地域振興施策の一つとして農林水産省や環境庁などを主体として「グリーンツーリズム」「エコツーリズム」の提唱が行われ、各種施策が実施されている。また文部省では、子供達が自然と接する機会が少なくなったことや実体験の不足、あるいは平成14年から義務教育の完全週休2日制実施などにより、自然体験教育を推奨している。その一環として平成11年(1999)CONEが発足された。CONEとは自然体験活動の新しいリーダーを育てるシステムである。

次に、わが国の資源や資産を「グリーンツーリズム」「ブルーツーリズム」「エコツーリズム」の視点から見ると、まだまだ数多くの魅力的なものが存在している。しかし現状では、そうした資産は十分に活用されることなく放置されているままであり、仮に活用されていても、その価値に値するほど活用されているとは言い難い。特に海・漁村において顕著である。

その理由は、1] 関係者がその魅力や価値に気が付いていない。2] 活用方法や募集方法がわからない。3] 対外的に周知されていない。あるいは4] これまでの経緯から指導者がハード事業に注目する余り、ソフト的事業である価値の活用には余り関心を示していない。などということがあげられる。こうしたことは、地域振興対策という面からも甚だもったいないといえる。

そこで関係者は、海・沿岸域というだけで貴重な財産であることや、漁業者は一般の人達では簡単に体得することができない豊富な知識や体験談を持ち、それを伝えるだけでも、すばらしいことを自覚し、自信を持つことが重要である。同時にそうした資源・資産を有効に活用し、人を活かすことによって始めて地域振興策につながることになる。

また外部からの流入、交易を活発化することは、地域経済や住民パワーを復活させることになり、若者には将来性の持てるトレンディな職場を育成提供し、年配者には豊富な経験と知恵を生かすことのできる職場をつくりだすきっかけとなる。

現在は、あらゆる産業が外国と競争をしながら国際化に対応している。わが国の第1次産業が、食料安全保障を盾に生産者保護のために輸入禁止や輸入規制を実施することは不可能なことである。レジャーにおいても、競争相手は近隣のレジャー施設ではなく、ハワイやオーストラリアであったり、遠くヨーロッパやアメリカであったりする。面白く、魅力的なものであれば、南極やアフリカにまで出掛けて行く。しかも費用や日程も、国内レジャーと比較して余り変わることはなく、世界中が競争相手となっている。

逆に見れば、世界一面白い企画をすれば、世界中から注目され、人が来て、特産品を食べてくれるということもありうる。漁業・水産業界にあっても国内だけで解決できることは何1つなくなった。そこで日本の水産業界は、環境や資源配分に考慮した「見る漁業、感じる漁業」として、大国の経済制裁に利用される水産政策ではなく、小規模漁業の育成を図り、世界に範を示すことが求められている。

以上のようなことを踏まえ、海レクと漁業の共生を図るためには「海・漁業体験教室」を提唱し、そのための手法として「マリンコーディネーター」と「海の博士」の研修を提唱したい。

 

 

 

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