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第4章 海・漁業体験教室の創設

 

第1項 緒言

 

・近年、地域振興施策の一つとして農林水産省や環境庁などを主体に「グリーンツーリズム」「エコツーリズム」の提唱が行われ各種施策が実施されている。

・文部省では、平成14年からの義務教育の完全週休2日制の実施などにより、自然体験教育を推奨している。その一環としてCONE(自然体験活動推進協議会)が設立され、自然体験学習や環境学習などの指導者の統一化が試みられている。

・わが国の資源や資産を「グリーンツーリズム」「ブルーツーリズム」「エコツーリズム」の視点から捉えると、まだまだ数多くの魅力的な資産がそのまま活用されずに存在している。特に海・漁村においては顕著である。

・資源・資産・人材を有効に活用し、人を活かすことは、地域振興策につながる。

・以上のことを踏まえ、海洋レジャーと漁業のトラブル解消の一手段として「海・漁業体験教室」を提唱する。

 

海洋レクリエーションの歴史は古く、これまでにも潮干狩りやダイビング、遊漁、いかだ釣り、地曳き網、定置網見学を始め様々な事業が行われてきたものの、いずれも単体、もしくは地元特定業者(ダイバーショップや民宿、ホテル、もしくは漁業者など)の間で行われてきた程度で、地域全体の経済や組織を動かすという段階までには至っておらず、あくまでも小規模な範囲の中で完結していた。しかし最近、漁業の衰退とともに、一部地域においては、ダイビングや潮干狩り、遊魚などが地域経済に大きな経済的影響を与えるようになりつつある。

また海水浴や遊漁は、釣り宿(借家・民宿)と一対のものとして戦前から行われてきた。経済低迷といわれる今日でも、国民のレジャー指向はおさまることなく、安近短といわれる手短で安価なレジャーに人気が高まっており、なかでも「海・海浜」はお金がかからないで遊べる格好のレジャー基地となっている。

ダイビングやサーフィンが若者や女性に人気を得、ヨットやプレジャーボートなどが一般車両と同価格になるとともに、海レクが一般化してきた。現在では、消費経済性向が低くなるに従って、海は金がかからないで、1年中遊べる格好の場となっている。

こうしたことから海(=漁村)をとりまく活用状況は、いやがうえにも高まっており、利用者が増加するとともに、漁業者及び漁村社会と海レクとのトラブルは、各地各様に深刻化している。そしてトラブルは避けて通れないと、レジャーのための海面使用を全面的に排除しているところさえある。また漁業と海レクとの調整問題を巡る様々な調査や報告書を見ても、全国の模範例となるようなケースは決して多くない。

そうした原因の1つには、海の怖さも、すばらしさも知らない人達が、海を活用することにより、ルールを守らない、非常識な行動をする人達が増えていることにある。

そこでこうしたマイナス要因を踏まえながらも、地域社会が真剣に討議し、如何にしてトラブルの未然防止対策を講じつつ、全体的にプラス思考として捉え、海レクを地域のなかに旨く取り入れるための方策を志向していくのか。

 

 

 

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