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一方個人的に活動する者は組織化が困難で、話合いの相手方が特定しない。このような不特定多数の者は、ほとんどが地元漁業の実態やそれとの調和的水面利用の方策を知らない者であるため、ボードセイリングを行う者への啓発用に立て看板の設置やコースロープの設置や、パンフレットを配布し、それなりの効果をあげている事例もある。他地域でもこれらの方策の実施について検討すべきであろう。しかしながらそれでも実効があがらない場合は、地方公共団体の「条例」の制定が有力と考えられる。

例えば、鎌倉市では、県が制定した「神奈川県水浴場等に関する条例」により遊泳区域内でのボードセイリングを禁止している。しかしこの条例は、ボードセイリングと海水浴客の水面利用調整を図ることが目的で、漁業との調整の事例とはならない。また、琵琶湖では県が定める「小型船安全規則」により、ボードセイリングなどの無動力船の届出とステッカーの貼付を義務づけている。

また、静岡県の浜名湖や富士五湖では、漁業との調和を図る目的で、条例によって漁業とレジャーボートなどの動力船の水面利用調整を行っている。

これらから考え合わせれば、県条例によりボードセイリングと漁業との調整を行うことも可能であろう。このような条例であれば、個人的に海にやってくる不特定多数の者にも規制を適用できるため、地域によっては地方公共団体に「条例」の制定などの働きかけを行う必要があろう。

2] 協定等の内容

1) 利用水面の設定

協定の内容として、漁業や養殖業との調和の観点から利用水面(ゲレンデ)の設定を行っている地域も多い。

例えば、漁業への支障が生じ易い定置網設置区域をはずして利用水面を設定している。また、利用水面設定に対し、漁協に協力金を支払うことで、漁業との調和を図っている。一方鎌倉漁協のように、利用水面を決めることは、逆に漁業活動を制約する要因となるとして、利用水面設定を行っていない地域もある。

2) 出艇規制並びに艇の識別

漁協との調和を保つ方策の1つにボードセイリングの総量規制がある。

また漁協と業者の話合いが行われている水面では、業者の指導を受けている者とそうでない者を識別することも必要で、これは漁業との調和を図るための監視を行うために有効な手段となる。

そのためにも例えば、業者と話合いをし、漁協の前面海域で遊走するボードセイリングは組合の発行するラベルを添付することを義務づけている。そして漁協は、ラベルの発行枚数を限定し、実質的に出艇規制を行ったり、業者の指導を受けた者を識別したりする。

3) 時間・期間の設定

漁業とのきめ細かな調整を行うためには、利用水面の設定だけでなく、時間や期間についても取り決めを行うことが効果的である。

例えば、養殖施設の設置時期などを考慮して時間、曜日を限定したり、操業時間や安全性の関係から夕方5時30分までと遊走時間を制限したりしている場合もある。

4) 安全管理対策

ボードセイリングは漂流事故を起こし易く、漁船による救助がこれまで頻繁に行われている。今後はこのような救助に関し、業者側が体制を整備していく必要があるが、大会開催時に業者が数隻の漁船を有償でチャーターしている実態がある。こうしたことがボードセイリングに対する漁業者の理解を深めることにもなっている。

今後は、安全性確保のために大会時のみでなく、休日などに監視・救助用に漁船をチャーターすることも考慮すべきであろう。

 

 

 

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