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b 海域の選定と指定内容

潜水海域を選定するに当たっては、基本的に漁業操業の支障とならないような場所を選定する必要があり、場合によっては潜水期間・時間の制限等も付け加えるのが望ましい。

c 海域指定の手続きと方法

潜水海域を指定するに当たっては、単に一部の漁協役員だけで決定することはトラブルの原因となるので、漁協の総会決議など正式な手続きを経るべきである。

潜水海域あるいは潜水禁止海域の指定の方法は、漁協が独自に指定する場合とダイビング業者との契約に基づく場合があるが、漁協単独の指定は、ダイビング業者に対する強制力がない点に問題がある(ただし、現在の事例では特にトラブルは生じていない。また漁協自営の場合は、相手方が存在しないので、契約に基づく潜水海域の指定はありえず、漁協単独の指定とならざるを得ない)。一方、業者との契約に基づく海域指定はその業者に対してのみ強制力がある。

また、契約の締結に当たっては複数の業者との契約についても配慮し、単一の業者の海域独占となるような契約は、締結しないよう注意することが重要である。

8] 安全対策と事故対策

a 事故責任の所在

ダイバーの危険性は常に伴っており、毎年死亡事故も発生している。日本海洋レジャー安全・振興協会の調べでは死亡・行方不明者は1990年に27人、1991年に31人となっている。このような事故のほとんどは水中で発生しており、責任はダイバー自身、あるいは案内を行ったインストラクターにあるが、ダイビング業者の責任も当然追求されることとなろう。

b 漁協自営の場合の対策

漁協自営でダイビング事業を行っている場合は、万一の事故防止のための安全対策の確立や事故発生時の利用客への補償のための損害賠償保険への加入を検討する必要がある。

c その他の場合の対策

漁協自営でない場合であっても、水中での事故発生時には迅速な対応が必要であり、ダイビング案内船に無線機を設置し、必要な場合には、陸上に潜水病対策用の減圧タンクを整備するか、付近の類似施設を利用できる体制を整備するなどの安全対策を検討すべきである。

d ダイバー案内船の対策

組合員が漁船によるダイバーの案内をしている地域では、ダイビング案内船上の安全対策についても配慮する必要がある。例えば荒天時の出航中止、天候悪化時の利用者の確実な回収体制の整備を行い、安全な案内ができるようにする必要がある。

また、船上での事故対策として、事故に遭った利用者への補償を確実とするため、損害賠償保険への加入を促進すべきである。

なお、案内業者のなかには遊漁船業を併せて営むものも多いが、出航中止などの基準の遵守、無線の設置、損害賠償保険への加入などを要件とする遊漁船の「マル適マーク」の取得に努めるなど利用客の安全を確保する対策を講じたい。

 

 

 

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