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改革が行われる時、それは試験的プロジェクトから、より大規模な全面実施へ、あるいは公共部門の一部からその他の一部へという、段階的なプロセスを経ることが多い(つまり、公共部門の一部が一つの会計原則にのっとって行われている間、他の一部では異なる会計原則にしたがっているという状態があり、長い移行期のどこかで歪みが生じる可能性があるということだ)。たとえば、イギリスでは、発生主義会計が国民健康保険(the National Health Service)に導入された後、中央政府に採用されたし、オランダでは複式簿記が義務づけられた出先機関もあったが、その親たる中央官庁には義務づけられなかった。そのうえ、われわれが大まかに三つに分類した手段は、複雑多岐な日常の営みに比して、当然ながら多少すっきりしすぎている。現実世界では、政府は、実績という要素を基本的に現金ベースのシステムに付け加えることによって、あるいは部分的な発生主義会計に多くの例外と特別な特徴をもうけて、その部分的会計を導入することによって、こうしたカテゴリーをかなり不鮮明にする(HM Treasury, 1998, pp. 132-54)。1990年代には、たとえばフィンランド財務省は、1998年年頭までに発生主義会計の完全なシステム導入を目指すプロジェクトを実施した。しかしながら、実現されたのは、当初の提案より、時期が遅れ、内容の薄いものとなった。

 

財政の全分野を網羅するために、ここで、ほんの数行のみ、公共部門の“監査”にかかわる改革に触れておく。われわれは、またしても三つ手段に分けた(またしても、これは各国の各部門における入り組んだ営みの複雑さの近似値以上のものと見なされてはならない)。第一の手段は、伝統的な規則遵守の財務監査である。監査役の基本的な関心は適法性と手続きの正しさにある。金は、適正に承認された目的のために、正しい手続きを経て、支出されたのか。適正な権限を付与されない支出もしくは不正の証拠はないかなどである。二番目の手段は、なんらかの実績に関わる問題の調査を追加することである。たとえば、監査役は浪費―不必要な支出によって購入されたものや、完全に合法的に購入されたが、ろくに使用されてないもの(学校がコンピュータを購入したが、使用できる教師が皆無であるため、ただ倉庫においてある、など)―を調査する権限を付与されるかもしれない。また別の伝統的監査の延長としては、データの質(「有効性」)をさらに深く追求する、などが挙げられる。議会、もしくは監査事務所に提示される数字は計算が合っているかもしれないが、どれほど信頼できるのだろうか。これは、結果的に組織の内部監査システムの実績を監査することである。第三の手段は、人の目を引く活動とて、実績に関して必要条件をすべて備えた監査を創り出すことであり、そのためには実績監査の知識・技術を開発する目的で日頃から会計検査院に独立機関か部局を設置することである。過去15年間にわたる実績監査の発展は注目に値するものがあったが、各国の中にはこれからまだ時間がかかる国もある(Pollitt, and Summa, 1997a; Pollitt, et al, 1999)。実績の監査役は「3つのE」、すなわち経済性(economy)、能率(efficiency)、有効性(effectiveness)に直接、焦点を絞るよう要求している(図1.1参照)。

 

実績監査は、オーストラリア、カナダ、フィンランド、オランダ、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス及び合衆国では、完全に確立され、それ自体の手続きと職員を備えるようになった。

 

 

 

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