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3.3.2 自主分離通航帯出入口付近で発生した衝突事例

自主分離通航帯出入口付近において発生した衝突海難は全海域で4件あり、そのうち3件は貨物船同士の衝突海難で1件は貨物船とタンカーによる衝突海難であった。

剱埼沖に設定された自主分離通航帯の南北出入口付近では2件の衝突海難があり、その要因は狭視界時における航法不遵守と動静監視不十分によるものであった。

伊豆大島風早埼沖の自主分離通航帯西方出口付近の海域では1件の衝突海難があり、その要因は狭視界時における航法不遵守であり、また、潮岬沖自主分離通航帯西方出口付近では1件の衝突海難があり、その要因は見張り不十分によるものであった。

以下に上記4件の衝突海難事例を記す。

(1) 事例3(平成9年広審第20号)【剱埼沖自主分離通航帯北側で発生した衝突】

貨物船T丸(198トン)、貨物船J号(4,879トン)

i) 原因

霧による視界制限状態において東京湾を浦賀水道航路に向けて北上中、両船が安全な速力に減じず、かつ、レーダによる他船の動静監視を十分に行わなかったことにより発生したものである。

T丸の経過

T号(船長以下2名で運航)は、平成8年7月1日10時47分、徳山下松港を発し、備讃瀬戸及び鳴門海峡経由で京浜港に向かった。

7月3日6時5分、T号一航士は剱埼灯台から214度、5.2浬の地点において霧のため視程が50mに狭められたことから霧中信号を始めたところ、T丸船長が霧中信号を聞いて昇橋した。

T丸船長は、昇橋後、一航士から船橋当直を引き継ぎ、同人に操舵させ、自らレーダを監視して操船の指揮にあたり航行した(10.5ノット)。

6時43分、レーダで右舷船尾80度2.2浬にJ号を探知し、動静を監視していたところ、浦賀水道航路に向かう同航船で、徐々に接近していることを知ったが、後方から接近する船舶は自船と著しく接近することとなれば適宜対処するものと思い、レーダによる動静監視を十分に行うことなく続航した。

6時56分、T丸船長はJ号が右舷船尾77度1,100mに接近したが、依然レーダによる動静監視を十分に行わなかったことから、これに気付かず減速するなどの避航措置をとらず続行した。

6時58分、T丸船長は左舷船首近距離に南下する反航船を探知し、その後、同船が接近してきたので短音5回の汽笛を2回吹鳴して徐々に右転するうち、7時1分頃、レーダ画面中心の右横近くにJ号の映像を認め、右舷側を見たところ右舷中央部少し前方にJ号の船首を視認し、左舵一杯としたが、7時1分、剱埼灯台から72度4.7浬の地点においてT丸と衝突した。

 

 

 

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