9時17分、C号船長は大王埼沖に設定された自主分離通航帯(以下「分離通航帯」)の北航通航路に入り、9時26分には機関を微速前進(7.0ノット)として続航した。
9時30分、左舷船首86度3.4浬にT丸を認め、さらに、左舷船首8度3.3浬付近に停留中の小型漁船4隻の映像をレーダ(ARPA)で初認した。C号船長は、ARPAを時々監視しながら北航通航路をほぼこれに沿って航行し、9時39分、針路を20度に転じたところ、左舷船首76度、2.6浬に認めたT丸及び同船に先航する東航4隻が前路を右方に横切る態勢となった。
その後、東航船4隻が次々に自船を避航していく中で、T丸の方位がほとんど変わらないことと、小型漁船がT丸の進路付近で、かつ、自船進路の約250m西方に、南北方向に数十メートルの間隔をおいて停留していることを確認して続航した。
C号船長は、左舷を航過する反航船を新たに認め、9時46分頃、反航船及び小型漁船との航過距離をさらに安全に保っつもりで針路を25度に転じたものの、依然T丸の方位にはほとんど変化がなかった。
9時51分頃、反航船と航過したので針路を20度に戻し、T丸に避航の気配が認められなかったが、警告信号を行わずに続航した。
9時54分、C号船長は76度、0.8浬にT丸が避航の気配がないまま接近するのを認めたが、同船の進路付近に小型漁船が停留していたことから、そのうち避航するものと思い、大型舶舶である自船の操縦性能を考慮して、早期に機関を後進にかけるなどの適切な協力動作をとらずに続航した。
9時58分頃、C号船長は350mに接近したT丸が小型漁船をかわす気配がないので、双眼鏡で操舵室を見ると人影が見当たらず、汽笛で長音を1回ずつ吹鳴したが、T丸が小型漁船の間を通り抜け接近してくるので、初めて衝突の危険を感じ、9時59分に右舵一杯とするが、10時00分、大王埼灯台から104度6.4浬の地点においてT丸と衝突した。
当時、天候は曇で風力2の北風が吹き、視界は良好であった。
T丸の経過
T丸(船長以下5名で運航)は6月16日19時10分、和歌山下津港を発し京浜港川崎区に向かった。
17日9時00分、T丸一航士は大王埼灯台から197度5.7浬の地点において針路を55度に定め、自動操舵として航行した(速力8.9ノット)。
9時33分頃、北上するC号を右舷船首50度3.1浬に初認し、C号が前路を左方に横切る態勢にあるにもかかわらず、大型船なので自船より速力が速いはずだから無難に航過していくものと思い、その後、C号に対する動静監視を行わず、9時37分には分離通航帯の南航通航路に入り、分離通航帯を横断する態勢で続航した。