その結果、1]文字はなるべく使わない、2]できるだけグラフ、絵などにより視覚に訴える、3]カラー化する、ということを教材作りのポイントとしました。
児童達が理解しやすいよう、行政相談、行政監察のイメージを絵であらわすこととし、行政相談については事務所の職員と行政相談委員が中立的な立場で相談を受けている場面を、また、行政監察については、行政ドクター(私の造語)である行政監察事務所が、患者に見立てた行政機関を診察(調査)し、判定(評価)を下している場面を絵にして模造紙に描いてみました。
次は、実際の行政相談、行政監察の例をもとに教材を作る作業です。
当事務所には、一日合同行政相談所の会場等で使用する相談事例を漫画風にアレンジしたパネル(土砂の除去、ガスの保安、悪徳商法等)が数枚あるので、それを使うこととし、その他四国行政評価支局が作成していた漫画風のパンフレット(「こんな時に行政相談」)もあわせて活用することとしました。
また、行政相談件数の推移や苦情件数の多い相談内容をグラフ化し、視覚に訴えることとしました。
困ったのは、行政監察の事例の選定です。結局、児童達に関係が深く、また、関心があると思われる「食品の安全・衛生に関する行政監察」(平成一二年一〇月勧告)と「義務教育諸学校等に関する行政監察」(平成一〇年一二月勧告)から食中毒問題といじめの問題を取り上げることにしました。
結局、新たに作った教材は模造紙八枚となり、その作成に数日を要しましたが、素人としてはまずまず(?)のものとなりました。(実際に作成したのは妻で、私はほとんど指示するだけでしたが、対外的には夫婦合作と称しています。)
なお、学校側に対しては事前に「出前教室」の趣旨、内容を説明したところ、快く承諾していただきました。
三 素人先生の登場
―ゆっくり、ゆったりが大切―
「出前教室」のスタートは、平成一二年一〇月二四日の芳泉小学校(岡山市)からです。同校の六年生二二人を対象に社会科の授業の一環として約一時間行いました。授業に当たっては、できる限り分かりやすい言葉でゆっくりとしゃべることをこころがけ、また、身振り、手振りも交えてみました。(しかし、後日学校側が収録した授業風景のビデオを見たところ、まだ早口で、身体の動きも堅く、人に教えることの難しさを痛感しました。)
生徒達も部外者による授業が珍しかったこともあってか熱心に聞いてくれ、食中毒問題、いじめ問題について関心を示してくれました。また、行政相談、行政監察のイメージ図も分かりやすかったようです。
「出前教室」の目玉のひとつは、行政相談委員による実例を通じた授業です。長安相談委員はパネルを活用しながら手ぎわよく説明され、その話し振りは、さすが元校長先生の貫禄でした。
児童達から「路側帯に電信柱が飛び出して立っているので通学に危険だが、どうしたらいいのか」、「相談のあっせんに相手機関が応じなかったらどうするのか」等の質問が次々に出るなど、活発な授業となりました。
また、当日の授業風景は、テレビ、新聞を通じて報道されましたが、その後地元のラジオ局から行政相談、行政監察についてしゃべってほしいとの依頼があり、「プリティーウーマン」という二〇分のトーク番組にも出演しました。