晩秋のホームにて
晩秋の日は落ち、むらさき色に昏れかかるJR北陸線敦賀駅一番ホーム。
この日、福井行政相談委員女性部会一〇周年記念誌発行の最後の編集委員会を終え、小浜線東舞鶴行きを待ち佇む。行政相談委員の委嘱をお受けしてより来し方一二年、何十回と福井事務所へと往復したことであろう。当時五四歳、定年に四年を残し市役所を退職して一年余の平成元年、高齢で退任された先輩男性委員のあとへと思いがけぬ委嘱をお受けした。おっかなびっくり、委嘱式に臨んだあの日、未だ若かったと今思う。
担当の小浜市は、県の南西部「若狭」地方に位置し、『岸壁の母』の舞台となった京都府舞鶴市と「気比の松原」で有名な福井県敦賀市との中間、人口三万四〇〇〇の鄙びた城下町である。奇勝「蘇洞門」を誇る若狭湾国定公園に面し、地場産業に若狭塗箸、小鯛のささ漬け他を挙げ、昭和二六年の近隣町村合併による市政発足以来、田園文化観光都市を標榜している。数々の伝説や、歴史ある社寺仏閣を擁し、『海のある奈良』と謂われる所以である。年々高齢化、少子化が進みつつあることは、また全国の例に洩れない。
相談活動と車
小浜市には二人の行政相談委員が配置されている。委嘱を受けた当時、お相手は八年先輩のベテラン男性委員で、二人三脚の相談活動の中、種々ご指導をいただいた。
ところで、先輩男性委員も車の運転はなさらない。それで、役所まわりなど活動には不可欠と思い立ち、委嘱を受けた早々から、危ないからと賛成しない夫に内緒で自動車学校へ通い始めた。雨降りの時に学校まで送ってほしいと頼んで、通い出したのなら仕方がないと夫にも認められ、仮免時には学校の教官以上に叱られながら練習したことも懐かしい。待望の免許取得後は、拙い運転ながら、申出事案の現場確認や役所まわりから、腰痛の先輩委員の定例相談日の送り迎えまで、おかげで随分と役立った。行政相談委員の委嘱をお受けしなかったら運転免許をとることもなかったかも知れない。