しかし議会のなかでの議論は、市長か任命するのだから、市長寄りのオンブズマンになるのではないか。苦情処理を第三者に委ねるのは、行政の責任回避につながる、職員がもっとしっかりやればいいではないか。介護保険制度は始まってもいない段階で、そのようなものは必要ない。ということでした。またオンブズマンの件を議会に説明する前にマスコミに発表し、始めてのオンブズマン制度ということで大きく取り上げられたので、話す順番が逆ではないかということもありました。
以上のような理由で否決されたのでありますが、もう一つお話しておきたいことは、「オンブズマン」という名称に抵抗があるということです。地方に行けば行くほど、オンブズマンというネーミングに抵抗かあります。何かいい知恵かありましたらご指導いたたきたいと思います。
今後どうするかということでありますが、来年一月に市長選挙かあります。そこで私はこれを公約の柱にしたいと思っています。公約は非常に重いわけですから、私が当選したら議会も議決してくれるものと信じているわけであります。
情報公開、それから説明責任、市民の満足度ということを満たしていくためには、オンブズマン制度は地方自治にとって必要なことだと思っております。二一世紀にはかなりの市町村で取り入れられるものと確信しています。
沖縄県行政オンブズマン制度の現状とその課題
沖縄県行政オンブズマン 宮城健蔵氏
沖縄県がオンブズマン制度を導入したのは平成七年四月で、都道府県段階では全国で最初でした。これまでに約一〇〇〇件(年間四〇〇件弱)の相談(苦情・要望)が寄せられています。
沖縄県オンブズマンが取り扱った事例をご紹介します。
一つは、首里城周辺の整備ということです。首里城は沖縄のシンボルでございまして、年間四〇〇万人の観光客が訪れますが、交通混雑を何とかできないかという苦情がありました。オンブズマンは混雑緩和対策として観光バス停留所の増設、タクシー駐車場の新設など一〇項目の提案をし、改善が図られました。去る七月にはここでサミットの晩餐会が開催されたことは皆さんご承知のとおりであります。
もう一つは、沖縄には高校生を海外に留学させるという制度がありますが、その応募要件に本籍が沖縄にあることとなっていました。このことについて「沖縄に数十年住み、税金も払ってきたが、本籍か沖縄にないということで子供が応募できない」という苦情がありました。オンブズマンもこの国際化時代にこのような国籍条項はおかしいということになり、この条項をカットということで決着しました。
次に相談窓口のことですが、沖縄県の場合、オンブズマン室と県民相談コーナーの二つの窓口がありますが、それぞれが受け付けた相談は、最も適当なところに回付するという仕組みを取っています。また国の相談につきましては行政監察事務所がありますので、相互に回付するという協定を結んでおりますし、合同相談所を開設したりしています。
沖縄では庶民のことを「ウマンチュ」といいますが、これは庶民が政治・行政の主体であるということでありまして、行政オンブズマンも住民の視点に立って対応する必要があると考えております。
今後、情報公開或いは地方分権の進展、さらに行政評価制度の導入に伴い、オンブズマンの役割はますます重要になるので、頑張りたいと思います。
弁護士からみた行政の苦情とその処理面での課題
弁護士 山本智子氏
私は弁護士ですから行政苦情に対応するのは、行政訴訟という側面からでありますが、要するに訴訟は勝つか負けるかということですから、問題を改善するとか、提言を行うとかいう機能は直接的には持っておりません。
しかし、私は福岡県の情報公開審査員を七年やっておりますか、そこで体験したことは何故これほどまでに情報公開が利用されるのか、ということであります。
それは情報公開を申請される方が、自分の問題を自分で解決するプロセスに参加するということが実感できるからではないかと思います。もう一つは、地方で起こる問題は身近で、自分の問題として解決出来るということだと思うのです。そういう意味で、オンブズマン制度が沖縄県、宮城県、川崎市など自治体の制度として持たれていますが、ます地方の制度として持って、そこから国へフィードバックしていくのが正解ではないかと思います。