日本財団 図書館


次に行政相談の運営でありますが、受け付け件数は全国で一年間に約二〇万件、そのうちの七割は行政相談委員扱で、行政相談委員の果たしている役割が非常に大きいということであります。相談の受け付けは、総務庁の出先機関の窓口、行政相談委員の自宅、特定の場所で開かれている定例相談所の他にインターネットでも受け付けております。

 

最後に取り組むべき課題でありますが、一つは周知度をあげるということであります。かつて行われた世論調査では周知度三〇%ということでしたが、これを高めるために、解決された分かりやすい事例に基つくPRなどが大切だと思っています。

それから総務庁は来年自治省、郵政省と一緒になりまして総務省になりますが、これを契機に行政相談をより発展させるための方策、例えば郵便局を活用した相談などについても考えなければと思っております。

 

行政相談制度における行政相談委員の役割と課題

 

九州行政相談委員連合協議会会長 坂本毅平氏

 

013-1.gif

 

私ども五〇〇〇人の行政相談委員は、総務庁長官の委嘱を受けて、それぞれの地域において住民からの苦情・意見・要望を聴取しております。そして行政相談委員が直接関係機関にその内容を通知する場合もありますが、多くの場合は総務庁の出先機関である管区行政監察局或いは行政監察事務所に通知して、処理を依頼し、それらの機関からの回答を申出人に伝えるということをやっております。

また行政相談委員は、業務を遂行する過程で得られました問題を行政運営の改善に関する意見として、総務庁長官に提出することも行っていますが、これも大変重要な任務だと思っております。

私ども行政相談委員は、自ら受け付けた苦情事案や長官に提出した意見が、改善に結びつくことに、大きな誇りをもって日々の活動をいたしております。

 

ここで、私が行政相談委員として担当した事案をご紹介したいと思います。

それはブラジルから来日し、関東地区の某市の町工場で働いていたことのある人からの申し出事案であります。その人はその後北九州市に転居して来て小さな企業で働き、一カ月一〇万円程度の収入を得ていました。ところが突然以前の居住地から国民健康保険税、市・県民税合わせて一七万円の納付請求がきて、その支払いに苦労しているという相談であります。私は関東地区の行政相談委員に連絡し、彼の旧居住地の関係機関との折衝を依頼しました。その結果、結論を申しますと税額が五万円に減額する措置かとられ、申し出人やその家族から大変感謝されたのであります。これは総務庁の行政相談の特色の一つに「全国ネットワークを活用した相談の受付・処理」ということがありますが、この事案は、行政相談委員のネットワークを活用し、うまく解決した事案であります。

 

本日のパネルディスカッションのテーマは「二一世紀を展望した行政苦情救済制度を考える」でありますが、日本型オンブズマンといわれる制度の一翼を担う私たち行政相談委員は、従来型の問題に併せ、今後出てくることか予想される問題、例えば男女共同参画社会の実現にむけての問題などにつきましても積極的に取り組み、国民の立場に立った、国民のための行政が行われますよう努力する必要があると考えております。

 

オンブズマン制度導入への取り組みとその課題

 

八女市長 野田国義氏

 

013-2.gif

 

私は、去る三月の市議会に福祉に関する苦情調整委員、いわゆる福祉オンブズマンを設置するための条例案を提案しましたが、結果的に否決されました。その経緯についてお話をさせていただきます。

 

何故福祉オンブズマン条例案を提案したかと申しますと、この八年間、市政に関する苦情処理をいろいろとやってまいりましたが、苦情処理を実践していく上で、第三者、中立的な外部の方にも入って頂く必要があると感じたのであります。

最初は、いわゆる市政オンブズマン―市政全般の問題を扱うオンブズマン―を是非とも作ってみたいということで進めていました。ところが議員の方々と話をしているうちに、市政全般ということになると、議員の役割と競合するということになりました。そこで一歩下がって、介護保険制度が四月に導入されるので、そういった分野を対象にしたものに切り換えていきました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION