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2] イニシアティブを取るべき時期を知っているプロアクティブなオンブズマンは、事後の是正措置だけでなく、有害な状況の発生が懸念される場合には、事前の予防措置を勧告します。オンブズマンの役割は「事後の是正と事前の予防」の両方あるのです。

3] プロアクティブなオンブズマンの勧告は、関係機関に受け入れられ、実施に移される「実際的な勧告」でなければならない。その場合のキーワードは明瞭、簡潔、的確ということになります。

4] オンブズマンの勧告は、「公平な視点」からなされたことか確認できるということか大切です。それは文言の上だけでなく、精神面からも公平性か映し出されていなければなりません。

5] プロアクティブなオンブズマンは、勧告が実施されたか、どのような効果をあげているか「勧告の実行を監視」しなけれはならないということです。

オンブズマンの有効性を達成するために必要な資質としてあげた、アクセシブルとインディペンデントについては、時間の関係で説明を省略しますか、最後に結論として次のことを申し上げたい。

 

オンブズマンは、動きのよい柔軟性のある手を持っています。この手は法のもつ長い腕に比へると短いものではあるが、五本の指を自由自在に使いこなすことによって、五本以上の働きをすることができるのです。いろいろな調査や勧告をする際の道具に使うのです。オンブズマンの力、熟練性が上がれば上がるほど、この指の数か増えていき、数が増えると対応できる範囲が広がっていきます。

オンブズマンがこの柔軟性のある手を身に付けるためには、オンブズマンの有効性を達成するための三つの要素―プロアクティブであること、アクセシブルであること、インディペンデントであること―がその焦点となります。

このような手は一体何に対して差し伸べられるのか。一つは国民から寄せられる苦情を公的機関にしっかりと認識させること。もう一つは解決策を出すことです。オンブズマン制度は苦情の救済を行う仕組みの一つですから、オンブズマンは犯人探しという姿勢ではなく、問題解決という姿勢をしっかりと持つ必要があります。そして最終的には、公共サービスの質の向上、即ち公的機関の有効性を向上させるということになります。

 

パネルディスカッション

 

二一世紀を展望した市民にとって望ましい行政苦情救済制度を考える

 

各パネリストの報告要旨は次のとおりです。

 

総務庁の行政相談制度とその運営

 

総務庁長官官房審議官 堀江正弘氏

 

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行政相談か始まったのは一九五五年。そして制度化されたのか一九六〇年です。先程ジャコビー氏が英連邦諸国でオンブズマン制度か広まったのか一九六〇年から七〇年というお話をされましたが、日本の行政相談制度は、それより少し早い時期に始まっているのです。そして行政相談委員制度も一九六一年にスタートしていまして、来年は四〇周年を迎えることになります。外国で日本の制度に触れられるときに、総務庁が行う行政相談と行政相談委員が行う相談を一体的に捉えて「日本的オンブズマン制度」と云われますが、この制度が、こんなに早い時期から始まっているということを認識して頂きたいと思います。

 

総務庁の行政相談の特色は、1]総務庁(各省庁を監察し、行政の改善を推進する機関)と、行政相談委員(国民から信望のある全国五〇〇〇人に総務庁長官か委嘱)の他に、制度的な改正が必要な問題について有識者の意見を聴取して、的確効果的な処理を行うために「行政苦情救済推進会議」を置いていますが、この三者が一体となって苦情の救済に取り組んでいるということ、2]行政相談で取り扱う対象が国の行政全般に及ぶということ、3]行政相談を担当する総務庁の職員も行政相談委員も各省庁から独立した公正中立な立場にあるということ、であります。

ジャコビー氏は、オンブズマンの重要なポイントとして、プロアクティブであること、アクセシブルであること、インディペンデントであることをあげられましたか、総務庁は政府部内の一つの機関ではありますが、他の事務や事業をやっている機関とは独立しておりますし、また行政相談委員は民間人で政府部外の人であるということで、この三つの要件を満たしております。そして総務庁行政監察局は国際オンブズマン協会の正会員として認められているわけであります。

 

 

 

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