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サービスを継続的に受給する福祉分野における苦情は、潜在化しやすいという指摘は、従来からなされてきたものであり、福祉分野のオンブズマン制度導入の大きな理由のひとつとなっていた。このことや住民の利便性を考えれば、介護保険における苦情処理機関においても住民がアクセスできる多様なチャンネルづくりが必要であろう。

もちろん広い意味での苦情処理機関には、オンブズマン制度や第3者機関のみならず、担当職員が直接対応する苦情対応窓口の設置も含まれる。このような内部組織対応を前提としながらも、担当の相談員を職員のなかから委嘱したり、OBなどに専門相談員を委嘱するケースも存在している。

これらを苦情処理機関の性格に注目して分類すれば、オンブズマン制度や第3者機関のように中立性・公平性・専門性を重視するものと、経済性・迅速性を重視した窓口などによる内部対応型、さらにこの内部対応型にできる限り専門性や中立性を加味したものなどさまざまである。II章でも言及されているように、オンブズマン制度や第3者機関の苦情処理体制の場合も、専門性と中立性のどちらを重視するかによって、さまざまなパターンが見られる。

このような市区町村レベルでみられるオンブズマン制度導入や新たな苦情処理手法の構築は、多様なテヤンネルづくりへの積極的な取組みと評価することができよう。しかしながら、このチャンネルが多様化し過ぎて、制度がわかりにくいものになってしまっては、かえって住民の混乱を招く結果となるであろう。前述のように、介護保険法では、介護認定についての不服申立ては、都道府県に設置されている介護保険審査会、サービスについては、国保連に苦情処理機能を設定している。これらをふまえて、市区町村、住民、施設、関連企業などが、それぞれの役割を認識したうえで、1次的な苦情処理機能を担うべきであろう。

また、行政相談委員、民生委員、人権擁護委員なども介護保険制度における身近な相談窓口としての役割を十分に果たすべきであり、意見交換の場を設定したりして、市区町村や都道府県との連携を深めていく必要があろう。同時に、地方公共団体などの苦情処理機関を設置する側も、これら各種委員を、積極的に活用し、独自の苦情処理プロセスのなかに組み入れていく手法も考えられよう。さらに、守秘義務などのハードルをクリアして、ボランティアやNPOなどとの連携も推進していくべきであろう。新たな制度の構築は、人材と同時に財政的にも大きな負担を余儀なくされる。特に近時の地方公共団体の財政状況を考えれば、深刻な問題であり、これらの連携による対応は、その対策としても有益であろう。

加えて重要なのは、これら苦情処理機関相互間にネットワークを構築し、受理した相談・苦情内容の分析などを行い、基礎的地方公共団体が担う1次的苦情処理機能のあり方を模索していくことであろう。

 

 

 

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