日本財団 図書館


本文において取り上げたものの他にも、埼玉県戸田市でも「高齢者総合介護福祉条例」に基づいて「介護福祉オンブズマン」を設置し、平成12年10月1日付で3名のオンブズマンが委嘱されている。今後も、これらオンブズマンなどの苦情対応組織の必要性は感じていたものの、介護保険制度の準備に追われ、介護保険導入後に改めて検討することにしていた市区町村なども含めて、苦情処理機関の設置は、拡大していくであろう。

ところで、介護保険制度導入以前に福祉オンブズマン制度を導入している市区が存在していた。これらの地方公共団体においては、介護保険の苦情処理についてさまざまな対応が見られる。

まず、平成2年に全国にさきがけて福祉オンブズマン制度を導入した中野区では、介護保険事業計画の策定にあたって中野区保健福祉審議会(一番ヶ瀬康子会長)にその基本方針等についての諮問を行った。同審議会は、答申のなかで、介護保険の苦情処理について「区の苦情に関する窓口は、利用者にとってわかりやすいものであるべきであり、保険福祉センターなど利用者の身近な地域に一本化されることが望ましい。中野区は他の自治体にさきがけて、福祉オンブズマン(福祉サービス苦情調整委員)制度を実施してきた。介護保険の発足後も、現行の福祉オンブズマン制度と関連づけて、総合的なシステムづくりを行う必要がある」としている。中野区の福祉オンブズマンに申立てができる苦情は、現在の制度では区の福祉サービス適用に関するものに限られているので、利用者が実際に区の福祉サービスを受けたりするなかで、不利益に被った場合の苦情しか受け付けられないしくみになっている。このため、介護保険に関する苦情をすべて受け付けるためには、何らかの改正が必要となる。

横浜市では、平成7年に横浜市福祉調整委員会を設けて福祉に関する苦情を受け付けてきたが、平成12年4月から、介護保険に関する苦情処理に対応するために2人の委員を増員させ9人体制とし、相談日についても週2日体制とした。横浜市では、介護保険に関する苦情・相談については原則として各区役所の窓口としているが、区の説明で納得できない市民のために第3者機関としての福祉調整委員会の機能を強化した。

三鷹市では平成9年10月に「福祉オンブズマン制度」を導入していたが、平成12年10月からは、この仕組みを基本として、対象分野を行政全体に広げた「総合オンブズマン制度」への移行を行った。

このような動向をみればわかるように、介護保険導入以前に福祉オンブズマン制度を導入していた市区では、その制度に改革を加えて介護保険の苦情処理にも対応しようとするものと従来の福祉オンブズマン制度は存続させつつも、介護保険については、その対象外とするものとに分かれている。前述の中野区保健福祉審議会答申も指摘しているように本来、介護保険に関する苦情も「介護保険対象以外の各種のサービスに関する苦情や要望についても、福祉オンブズマン制度も含め同じ部署で対応することが区民にはわかりやすい制度」となる。その意味では、「福祉」の看板を掲げる以上、介護保険に関する苦情も対象とすることが、住民にとってはわかりやすい苦情処理機関であるといえよう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION