おわりに
―介護保険に関する苦情処理体制等の動向と今後の課題―
本報告書では、介護保険制度におけるさまざまな苦情処理体制について取り上げて報告してきた。
まず、I章では、介護保険制度発足に関して、介護保険法を中心としてその成立過程について背景を含めて説明し、介護保険に関する苦情処理について概観している。これらをふまえたうえで、都道府県レベルの苦情処理体制について、介護保険法で規定されている介護保険審査会と介護サービス苦情処理委員会について言及している。これらは、介護保険法により、その内容がかなり細かく規定されているので、制度面においては各都道府県の特色を考察する余地がほとんどないような状況であった。
次いでII章では、基礎的地方公共団体レベルに注目し、市区や広域連合の特色ある苦情処理体制を紹介している。全国的な調査は不可能であることから、東西の中心である東京都下と大阪府下の市区のなかで特色ある取り組みを分析している。また、広域連合制度を利用した介護保険制度を構築し、その苦情処理機関としてオンブズマン制度を導入した北海道空知中部広域連合についても分析を加えている。
さらにIII章では、民間施設オンブズマンについて、介護保険の苦情処理を中心として述べている。ここでは、民間施設オンブズマンの市民活動型、施設単独型、地域ネットワーク型の3類型について、それぞれの代表的事例を報告し、民間施設オンブズマンの信頼関係に基づく監視・評価機能の設定と社会的に改善改良が求められるサービスの質の向上という二つの役割に注目して分析している。
IV章は、今回の調査・研究を実施していく過程で入手した相談・苦情事例や資料を分析したものを掲載している。現状を理解するとともに今後の苦情処理体制を考える上での参考になろう。
なお、各章または各項ごとに、執筆者の分析による特色や課題が述べられているので、合わせて参考にしていただきたい。この調査・研究にあたり、ヒヤリング調査や資料提供などでご協力いただいた関係機関に感謝の意を表する次第である。
これら苦情処理体制の動向のなかで注目すべきは、市区町村レベルと施設における苦情処理機関のあり方であろう。後者については、III章において執筆担当者によって論じられているので、ここでは、前者の立場を中心に述べていく。
市区町村レベルの苦情処理機関の設置は、介護保険法の第23・29・30・77・84・183条などを根拠として行われるが、住民にとって一番身近な基礎的地方公共団体に、何らかの形で苦情処理機関が置かれるのは、当然のことといえよう。なかでも、介護保険制度導入を前にした平成12年当時の丹羽厚生大臣の介護サービスオンブズマン構想の発表やそれにともなう当時の厚生省のモデル事業の展開などにより、オンブズマン制度が注目を集める結果となった。これらに影響をうけてさまざまな基礎的地方公共団体においてオンブズマン制度や第3者機関による苦情処理体制を導入するところが多く見られた。