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3. 施設オンブズマン制度の特色と課題

施設オンブズマン制度は、介護保険制度の苦情処理とは違い、開業停止などの強硬な手段を持たないのが普通である。したがって、民間の施設オンブズマンの役割は、2つに集約できるのではないかと思われる。一つは、信頼関係に基づく監視・評価機能を設定することで、法律とか罰則規定といった強権発動ではない相互信頼関係に基づく自主管理的社会を構築するという面であり、第2には、こうしたオンブズマン活動を通じて社会的に改善改良が求められるサービスの質の向上を目指すという点である。

前者の問題に関しては、多くの施設オンブズマン活動は改善勧告は出すが、具体的にはサービス提供施設の自主的解決という信頼関係の中で動いており、もはや新たに規制する法律や制度をつくるよりも、自主的な規制や協力を構築するところから、社会の新たな協調的課題解決システムを構築する以外にないと考えられる。こうした動きは、自治体が住民参加から協働社会へと、様々な市民主体型の行政運営へ変革していこうという動きと合致する。

福祉分野におけるサービス供給者と利用者の協働による応答関係の確立は、まさにパートナーシップの形成であり、「東久留米民間福祉オンブズパーソン」や「あいち福祉オンブズマン」の場合のように、登録施設の加入促進や市民への周知が、根幹的な課題となる。

第2のサービスの質の向上を図る動きは、ここのサービスだけを高めても全体としてのサービス利用者の満足度につながらないことは、様々な苦情や相談を見て明らかなことである。クリス・スケルテャーは、サービスの質を向上させるには全体としてのサービスパッケージを4つの項目から改善することが重要であるとする。それは、1]サービスの性格、2]個人的関係、3]サービス環境、4]利用者の権利の面である。1]サービスの性格においては、有用性:当該機関は利用者が望むサービスを提供しているか、標準:適切な標準レベルにあるか、適時性:サービスを必要な時に利用できるか、確実性、情報、公平性、業績などの面から検討すべきであり、2]個人的関係は、丁重な接遇態度、応答性、能力、コミュニケーション、安全性、信頼性の面から検討し、3]サービス環境では、サービス環境許容範囲、接近性、機能性の面から検討し、4]利用者の権利では、権利、意見、選択、救済の面から、総合的にサービスの質を検討しなければならない(Chris Skelcher, Managing for Service Quality, Longman, 1992, p.14)という。たとえば、名古屋市においてはいろいろな苦情や相談、さらには市民アンケートを行って「介護サービスの質を確保する検討会」を実施し、サービス事業者の自己点検チェック票も作成している。

これらの活動は、まさしく質の向上に寄与するものである。

オンブズマン活動では、「あいち福祉オンブズマン」の業務契約によるオンブズマン機能のように、外部のチェック機関に施設のサービスの質や人権擁護を保障するという仕組みは、外部監査制とも似た仕組みであるが自主的に契約する点で意味は大きく異なる。自己改革の意味を持ち、サービス内容を公表するものであるので、閉鎖型の施設よりは開放型の施設を利用者は選択するのは自明の理であるといわざるをえない。

 

 

 

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