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理事長が委嘱した5名程度の委員が「オンブズマン委員会」を構成する。現在の構成は、民生委員4名、苑の副施設長1名となっており、うち民生委員の2名は地域のボランティア団体の代表であるという。利用者から相談を受けるのは4名の民生委員だけであり、副施設長は施設との連絡役として参加しているにとどまる。委員の任期は1年であり、委員会の会議は隔月開催となっている。運営方法は、月に2度(隔週水曜日)民生委員の委員が2人一組になって相談室において相談を受け付け、相談内容はすべて記録されることとなっている。相談室では2名のオンブズマン以外、施設関係者は一切同席しないルールになっている。寝たきり老人については部屋にオンブズマンが出向いたり、痴呆性の老人については家族・友人からの苦情・相談も認めるといった弾力的な運用もしている。オンブズマン会議では、相談内容についての意見交換、施設への要望、施設からの説明・回答が議題とされ、相談内容についての意見交換、施設への改善要望、施設からの説明・回答の審議を行っている。苦情の解決に当たっては、入苑者、オンブズマン、施設代表でよく話し合って解決することとされている。

具体的な苦情の解決は、オンブズマンの相談時間終了後に問題のあるケースについては、副施設長がオンブズマンから直接報告を受け、改善策を講じる。こうした苦情・要望は、入苑者からだけに特定せず、さらにオンブズマンの顔写真、住所並びに電話番号を書いた案内板を三ヵ所に掲げることで、入苑者の家族からもオンブズマンの自宅に連絡を取ることを可能にしている。また、特に問題のある事態については、オンブズマン委員会が監督権のある行政機関に報告することができるとしている。このように毅然とした対応をとることによって、施設内における人権侵害にも対応することが可能となるし、施設単独オンブズマンが施設における単なる形式的仕組みにとどまるものではなく、オンブズマン本来の第三者機関の意義を担保することにもなる。

 

 

 

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