しかし、「自由契約特別養護老人ホームとケアハウスの入居者は様々な意見をぶつけてくる」。そこで、理事長は自分の意見や要望を主張する人だけではなく、より多くの入所者の声を聞くために、中立的な第三者が利用者の立場になって相談できるオンブズマン制度を導入しようと決定した。
ちなみに、清流苑では従来から施設の職員による「暮らしよろず相談」、意見箱、運営協議会、面談会などを実施してきたが、施設の職員だけでは高齢者のニーズを吸い上げることには限界があったという。また、オンブズマン制度の導入は、10年以上も前から考えていたが、「一つ一つに対応していくのは現実難しいだろうし、職員の合意が得られるかなど課題が多すぎて、これまでなかなか踏み込めなかった」という。
それが、厚生省のモデル事業である契約制特別養護老人ホーム制度を実施したことが、オンブズマン制度導入のきっかけとなったのである。つまり、自分の意思で選択できる高齢者ばかりが特別養護老人ホームに入所しているわけではなく、その多くが選択できない、他に行き場所がない高齢者が入っているのがほとんどであり、主張できない立場の人たちの権利やサービスを無視するのではなく、積極的に隠れた潜在的な声をすくいあげることで、福祉サービスを改善していこうとしたのである。
イ. オンブズマン制度の仕組み
日本の社会全体でも、福祉のこれからのあり方に関心が高まり、自らの将来を真剣に考えるようになってきたし、自治体においても福祉体制の整備が目前の課題になり、理事長自身オンブズマン制度の導入の時期が来たと判断した。平成7年8月に創設した施設オンブズマン制度は、国内の高齢者福祉施設では、初めての試みである。