ここでは、福祉全般にわたるオンブズマンは他の章に任せ、高齢者福祉施設のサービスに関するオンブズマン制度の展開と内容を中心に論じることとする。高齢者福祉の施設オンブズマンには、市民主体型オンブズマン、施設単独型オンブズマン、地域ネットワーク型オンブズマンがみられた。
オンブズマン制度が、権利の擁護、過誤に対する現状回復措置、告発及び改善命令という点に特徴を有するものであるが、福祉施設のオンブズマンは福祉サービスの質の向上に力点を持つという点で、大きな違いが見られた。当然、オンブズマン制度であるので、利用者(高齢者)の権利擁護にも十分配慮するものである。
たとえば、市民主体型オンブズマン制度を展開しているのは、東久留米市「民間福祉オンブズマン」や「宝塚市福祉オンブズ委員会」などが、介護保険の発足に際して検討され、展開され始めてきている。ここで、市民主体型とするのは、市民オンブズマンや「市民運動型」オンブズマンと称する活動もあるが、そこでは告発を中心においているため、違いを明確にするためである。また、市民主体型オンブズマンは、市民主体ではあるが行政との協力形態であったり、事務局が行政もしくは準公共的機関である社会福祉協議会などにあったりするハイブリット(複合)型であるのが特徴である。市民主体型は、自らが市民としての役割を意識し、協働して地域の役割と責任を再構築しようとするところにある。まさに、自らが要求するだけではなく、自ら進んで役割を担っていこうとするもので、世田谷区が進めようとしている「新しい公共」の形成と同様であると考えられる。
施設単独型は、高齢者福祉施設では全国初のオンブズマン制度を創設した「清流苑オンブズマン制度」がある。その後、「旭が丘の家高齢者福祉オンブズマン会議」、「正吉苑オンブズマン」、「利用者の権利を守る委員会」など施設単独型オンブズマンが普及してきている。
地域ネットワーク型オンブズマンは、「湘南ふくしネットワーク」、「あいち福祉ネットワーク」「介護保険市民オンブズマン機構・大阪」などが該当し、各地で福祉施設のあり方やサービスの質の向上を目指した監視告発型の市民団体やNPOが増えてきており、こうした団体との連携が見られてきた。地域ネットワーク型オンブズマンは、専門性や情報蓄積があるので、こうした団体会員等への研修を行うなど、市民レベルヘの情報提供や専門性の付与に寄与している。
2. 施設オンブズマンの導入と展開
(1) 民間社会福祉施設における施設単独型オンブズマンの設置
ア. オンブズマン制度導入の背景
社会福祉法人永生会(児玉貞夫理事長・施設長)は、昭和55年に特別養護老人ホーム「清流苑」を開設し、現在、デイサービス(A型、E型)、ホームヘルパー事業、大分市在宅介護支援センターなどさまざまな福祉サービスを提供している。