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(4) 特色と課題

苦情処理に限られたことではないものの、空知中部地域の場合、構成する1市5町で広域連合を設置し、介護保険制度を実施していること自体が、大きな特色の1つといえよう。

介護保険制度への広域的な対応の方法には、広域連合のほかにも一部事務組合、機関の共同設置、市町村相互財政安定化事業、事務の委託などが存在し、広域的に処理しようとする事務の内容や既存の広域的体制等に応じて、適切な広域的取り組みの方法を検討していく必要がある。特に介護認定審査会のみならず保険財政も含めた広域的な取り組みを行おうとする場合は、1]介護保険運営を共同実施することにより、保険財政の安定化と保険料水準の平準化が図られること、2]介護認定審査会委員の確保が容易となること、3]介護認定審査判定の公平性が確保されること、4]広域的なサービス基盤整備を行うことにより、サービス提供体制が確保され財政負担も軽減されること、5]事務量、人件費等の効率化がはかられること、6]特別地方公共団体を設置することにより、専門的な事業運営が可能となることなどから広域連合や一部事務組合が適しているといえよう。さらに、介護保険制度が保健・医療・福祉等の施策と密接な関係を有することを勘案すれば、構成団体の事務を単に持ち寄って処理する一部事務組合よりも、より高度な調整機能を有する広域連合の方が適切である。すなわち広域連合においては、広域連合が処理する事務だけでなく、構成する市町村に残存させた介護保険に関する事務の一部や関連する保健・医療・福祉施策や国保事務等についても、広域計画に盛り込み、他の構成市町村と連携を図りながら運営していくことが可能なのである。

一方、介護保険の広域的な取り組みについては、広域で調整介護保険料を設定した場合、保険料賦課対象者の分布状況、要介護者の数、要介護者の介護、介護サービス受給(在宅・施設)の状況によって、保険料を市町村単独で設定した場合に比べ損をする市町村と得をする市町村が生じてくる点などがデメリットとして指摘されている。

空知中部広域連合では、過疎・高齢化の進展、財政的要因や地理的要因に加えて前述したモデル事業での経験から、特に介護認定審査について、住民のことをよく理解している地元審査委員と客観的評価ができる近隣町村の審査委員が合同で審査することの重要性が認識されている。また、従来から福祉行政に熱心であった北良治奈井江町長が広域的連携の重要性を強調したことや、同町が進めていた職員の高齢者介護のための海外研修などを通じて蓄積されていたノウハウの共有などが広域連合発足の合意形成に大きく寄与したといえる。

以上のような介護保険制度における公平性・中立性・客観性の空知中部広域連合の理念はオンブズパーソン制度においても反映されている。特に、初代の広域連合長に就任した北良治奈井江町長は、オンブズパーソンの任命に際しても、なるべく住民の視点から苦情を処理する体制を確保するために、現在の3人のオンブズパーソンを、僧侶、元教師(現民生委員)、元自治体収入役(現教育委員)から委嘱している。いずれも福祉・介護の専門家ではなく、オンブズマン制度の有する中立性と住民の視点に立脚した第三者的機関を重視したものとなっており、専門性の欠如が存在することとなる。しかしながら、空知中部広域連合では、オンブズパーソンの十全な研修等を通じてこの点を補っている。

 

 

 

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