行政・事業者からの独立性という面では本稿の三つの例の中で最も徹底した組織である。その反面、専門性という面ではやや劣る。しかし、『機構』は、当面の活動の中心を施設入所者の日常的な要望や苦情をくみ取ることに置くため、専門性の不足はそれほど問題にはならないと思われる。ある程度の専門的な知識を持った多くの市民オンブズマンと、それをサポートする少数の専門家がバランスよく組み合わされば十分成果が期待できるだろう。
第三の情報提供機能に関しては、「おおさか介護サービス相談センター」と「市民オンブズマン機構・大阪」が積極的に取り組む姿勢を示している。前者は事業者評価基準の作成と事業者評価結果を、後者はオンブズマンに寄せられた相談・要望・苦情の内容と対応の事例報告をインターネット上で、それぞれ公開していくとしている。客観的データの充実とその公開によって利用者が適切なサービスを選択することが可能になる。また、そうした情報の公開は、利用者の消費者としての意識を高め、事業者に緊張感をもたらし、サービスの質の向上につながるだろう。
本稿で取り上げた三つの取り組みは、いずれも今年スタートしたばかりであり、その成果が明らかになるにはまだ時間がかかる。これらの取り組みが有益なものとなるには、利用者への周知徹底と関係各機関の連携強化が重要である。介護保険法が想定するいくつかの苦情処理に関わる機関が相互に連絡をとり、補完しあうことで重層的に介護サービスの質を担保するシステムを構築することが必要である。
【参考文献】
河野正輝「福祉サービスの苦情」週刊社会保障1728号 1993年2月
「イギリスの苦情処理手続基準」週刊社会保障1839号 1995年5月
佐藤進・河野正輝編『介護保険法』法律文化社、1997年
【参考資料】
大阪府『新ふれあいおおさか高齢者計画』2000年3月
大阪市『介護保険事業計画』2000年3月
大阪市『高齢者保健福祉計画』2000年4月
大阪市民生局高齢施策推進部提供資料「『おおさか介護サービス相談センター』の開設及び業務の開始について」2000年10月
大阪地方自治研究センター政策資料No.48『アメリカの介護オンブズマン養成プログラム』2000年1月
介護保険市民オンブズマン機構・大阪「設立のためのコンセプト・シート」1999年12月
枚方市『広報ひらかた』No.977(2000年3月15日)、No.986(2000年8月1日)
枚方市福祉保健総務課「福祉オンブズパーソン運営状況報告」2000年10月