最後に、上記4区は、これまでの実績や地域の実情に合わせて、まず、「オンブズマン制度の導入」、「サービス評価制度の導入」、「地域社会ネットワークの導入」の内のどれかに焦点を絞り、「相談・苦情処理体制」への取り組みに着手したと思われるが、どの区も、現在、相談・苦情処理体制への対応は、どれかひとつに力点を置くというわけではなく、上記3つの全ての方策を組み合わせて取り組もうとしている。今後の展開のなかで、この三つのうち、どの取り組みが有効なのか、あるいは、三者のハイブリッド化した取り組みが経験のなかから生まれてくるのか、それとも全く違った取り組みが用意されることになるのかなど、注目すべき点は多い。いずれにしても、サービス利用者(要介護者等)の相談や苦情の処理に関して、上記の4区のような先進的な取り組みを進める意欲的な自治体が増えれば、国全体の水準のかさ上げにもつながるだろうから、これらの自治体の今後の展開には大いに注目していく必要があるといえる。
イ. 武蔵野市、調布市及び多摩市の苦情処理体制等の取り組みを通じて
東京都では、介護保険制度下でのサービス利用におけるトラブルを可能な限り未然に防止し、トラブルが発生した際にも迅速、適切に対応することなどを目的として、平成11年5月に「利用者保護制度検討委員会」(橋本泰子委員長)を設置して討議してきた。
この委員会には2つの小委員会が置かれたが、そのうちの「苦情対応ネットワーク検討小委員会」がまとめた報告書が、本章の冒頭でも触れられている「相談・苦情マニュアル」である。この報告書は、「小委員会の結論の一つは、苦情等の相談における保険者としての区市町村の役割に対する期待です。地域の情報が得やすく、苦情等に中立的に公正に対応できる立場は他にありません。区市町村が直接対応するか、第三者機関を活用するかは別として、区市町村の役割は極めて重要です」と述べている。このことは、市区町村の第1次的な相談・苦情処理体制の整備の重要性を強調しつつ、その対応として直接対応型と第三者型を例示し、市区町村の独自性を発揮する余地を提示している。
ここでは3市について、独自の相談・苦情処理体制を概観したが、武蔵野市が市職員のなかから専門員を委嘱し、直接対応型を採用しているのに対し、多摩市と調布市は、第三者機関としてのオンブズマン制度を採用している。また、同じオンブズマン制度を採用する市でも、多摩市の場合は、民間事業者等が行うサービスも対象としている点に特徴を有するのに対して、調布市の場合は、市の設置する協議会や専門員、さらには、市民による相談などと並ぶ制度の一つとして福祉オンブズマン制度を位置付けており、むしろ、介護保険以外の福祉サービスの相談・苦情処理に力点が置かれている。すでにこれらの功罪等については、それぞれの「特色と課題」の項目で言及したのでここでは触れないが、今後は、これらが処理した相談・苦情の内容を集積し、分析を加えて今後の対応の参考に資する努力が必要であろう。