また、板橋区と大田区がオンブズマンに直接申し立てを行なえるのに対して、足立区と品川区は区長の諮問を通じてとなっており、相談・苦情処理の運用の面の相違から、区・事業者・利用者との間の関係に違いが発生することになるかもしれない。さらに第三者機関として発展してきたオンブズマン制度の利点を生かしつつ、介護保険課・基幹支援センターを中心とした「相談・苦情処理体制」の連携をどのように図っていくかも今後の課題といえる。その意味で大田区の取り組みと、足立・板橋・品川区の取り組み姿勢の違いは今後の動向を探る上で、貴重な経験となるかもしれない。
(イ) サービス評価制度の導入
品川区の「介護サービス向上委員会」は、介護サービスの妥当性、情報の開示、専門性の確保への対応策として、収集・蓄積した相談や苦情の分析から、介護サービス提供事業者の「規模・実績、サービス内容・価格、人員・設備、苦情の取り扱い方」などをレビューする「介護サービスの公正・中立な評価をする仕組み」への取り組みであった。この点では、足立区も「高齢者市場協議会」のなかに「サービス向上委員会」を、また大田区も「介護保険推進協議会」を設け、板橋区で同様な取り組みを検討し始めている。
しかし、この分野は、品川区が一歩進んでいるようだが、まだどこの区も検討が始まったばかりで、これからの展開が大いに注目される段階にあるといえる。また、どのような基準でサービスを評価し、その評価を情報としてどのように利用者に提供していくのかなど、今後、介護保険制度のパフォーマンスを向上していくための今後の検討課題も多い。
(ウ) 地域社会ネットワークの導入
板橋区の「おとしより健康福祉センター」、品川区の「在宅介護支援システムとふれあいサポート」は、地域ケア体制の確立への対応策として、区、介護サービス提供事業者、専門スタッフなどの間で、専門的なケア・マネージメントの考え方を基本に据えた介護サービス連携の拠点やネットワークづくりを進める「地域社会ケア・ネットワークの仕組み」への取り組みであった。また、足立区の「高齢者市場協議会・足立あんしんネットワーク」もみてきた。どちらも、多様な介護サービス関連機関の連携による地域ネット・ワークの構築を通じて、問題の解決を未然に防止することを目指す手法である。
しかし、両者には、ネットワークの核に、行政が存在するかどうかという点で、取り組み方の違いがあるように思われる。これは、介護サービスの提供のあり方によって、つまりサービス提供の方法が民間主導型(足立区)か、行政主導型(板橋区)か、あるいは公と民のパートナーシップ型(品川区)かによって、1]サービスの質がどの程度改善されるのか、2]苦情を未然に防止するためにはどの型が有効・効率的なのか、あるいはまた、3]行政、事業者、利用者の役割や責務の守備範囲をどのように設定するのかなどによって、どの程度介護保険運用上のパフォーマンスに違いが生ずるのか、興味深いテーマを多く含んでいるように思われる。