(8) 特色と課題
ア. 足立区・板橋区・大田区及び品川区の取り組みを通じて
本稿では、介護保険制度において最も重要な役割を担っている基礎的自治体のレベルにおける様々な「相談・苦情処理体制」への先進的な取り組みについて、足立区・板橋区・大田区・品川区を事例に取り上げた。上記の4区は、介護保険制度の円滑や定着化を図っていくためには、以上みてきたような「新しい仕組み」を通じて、サービス利用者(要介護者等)からの要望(相談や苦情)に対応していかざるを得ない状況にあると考えている。サービス利用者(要介護者等)の相談や苦情の処理に関して、上記の4区のような先進的な取り組みを進める意欲的な自治体が増えれば、国全体の水準のかさ上げにもつながるからである。
しかし、1]地域ネット・ワーク(高齢者市場協議会・足立あんしんネットワーク)を活用することで、相談・苦情の処理に対応しようとしている足立区、2]高齢者・要介護者相談、介護情報の提供、介護専門技術支援など多面的機能を持つ基幹在宅支援センター(おとセン)と連携した介護保険苦情・相談室を中心に、相談・苦情の処理に対応しようとしている板橋区、3]サービス向上委員会による介護サービスの評価を通じ、要介護者の機会の平等、介護サービスの可視性・利便性、事業者間の競争によるサービスの向上を目指すことで、要介護者等からの相談・苦情に取り組もうとしている品川区、4]高齢者福祉オンブズマン制度を通じて「要介護者の救済」、「介護サービス関連機関の非違等の是正(監視)」、「介護制度の改善」に対応しようとしている大田区の事例である。
上記の4区は、実際に、介護保険制度の円滑な定着化を図っていくため、以上みてきたような「新しい仕組み」を通じて、サービス利用者(要介護者等)からの要望(相談や苦情)に対応していかざるを得ない状況にあると考えている。しかし、今後、以下のような仕組みの違いから「相談・苦情処理体制」のパフォーマンスに差異が生じてくるかもしれない。
(ア) オンブズマン制度の導入
足立区の「高齢者福祉サービス苦情解決委員会」、板橋区の「介護保険苦情相談室」、大田区の「高齢者福祉オンブズマン制度」は、介護サービスの普遍性や公平性、あるいは緊急的な保護措置への対応策として、世話を受ける側の立場に立ち、要介護者等の相談や苦情などを公正中立に受け付け、処理していく「介護保険制度全体を監査・監視する仕組み」への取り組みであった。(品川区の「サービス向上委員会」もオンブズマン機能を有している)。
足立区の「高齢者福祉サービス苦情解決委員会」は事業者でもある社会福祉協議会内の「権利擁護あだち」に、板橋区の「介護保険苦情相談室」は機関在宅支援センターに、大田区の「福祉オンブズマン制度」は広報公聴課に、品川区の「サービス向上委員会」は介護保険課に、事務局が置かれており、この組織形態の相違によって、今後、要介護者等への対応の仕方やサービス利便性などの面で差が出てくることも考えられる。