このように武蔵野市では、計画、条例、マニュアルなどを整備し、独自の介護保険苦情処理制度を構築している。特に、現在のサービス相談調整専門員は、市職員のなかから委嘱されるため、中立性には欠けるものの、財政的負担も少なく、住民にとっても、福祉や介護に詳しい常勤の職員がいつでも苦情を聴いてくれる点で安心感があるといえ、手厚い福祉で知られる武蔵野市の創意と工夫が感じられる制度である。しかしながら、専門員も一職員であることから、苦情処理の過程のなかでの職員相互間の関係や福祉専門職以外の一般行政職から専門員が委嘱された場合の人事移動の問題などは、運用面において留意しなければならない点であり、専門員の養成や行政OBなどの活用を含めて今後の検討課題となろう。
(6) 「福祉オンブズマン制度」の導入 ―調布市―
ア. 制度導入の背景
調布市では、介護保険制度のスタートに伴い「調布市高齢者総合計画」を策定した。高齢者総合計画とは介護保険事業計画と老人保健福祉計画を総称したものである。すべての高齢者にとって住みよいまちづくりを目指すには、介護のみならず保健、福祉、住宅、防災等を包括した総合的な高齢者保健福祉施策を展望する必要があると調布市は考えたのである。
調布市では「調布市高齢者総合計画」(以下「高齢者総合計画」とする。)を策定するに当たり、平成10年6月に市民参加による調布市介護保険事業計画策定委員会を設置した。委員会は公募市民10人、学識経験者2人、保険医療福祉事業関係者11人、市職員2人の委員により構成された。平成11年6月から同委員会において審議を重ね、平成12年3月23日同委員会から答申を受け、高齢者総合計画を策定した。
高齢者総合計画は調布市の運営方針である基本構想を受けて、1]個の確立と尊重、2]住みたいと思う地域環境の創造、3]地域社会への参加と責任、以上3つの理念が規定されている。各理念を実現するために9つの基本目標が定められた。
調布市福祉オンブズマンは前述の基本理念のうち1]の「個の確立と尊重」に定められた権利の保護の目標により設置された。権利侵害を受けやすい高齢者を保護するために福祉オンブズマンを活用して高齢者の権利の保護に努めるためである。
イ. 制度の概要
(ア) 目的及び設置
「調布市福祉オンブズマンの設置に関する規則(平成12年調布市規則第12号)」(以下規則とする。)及び「調布市福祉オンブズマンの設置に関する要綱(調布市要綱第24号)」(以下「要綱」とする。)は、平成12年4月1日から施行された。