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第2 調査研究結果

 

I. 介護保険制度施行に伴う苦情処理体制の整備状況

 

1. 介護保険制度の発足

日本の急速な少子高齢化の進展につれ、世代間の人口構成の不均衡が拡大し、高齢者の介護福祉は喫緊の国家的課題であると認識されてきた。特に、高齢者介護問題については、昭和63年から、在宅福祉サービスの緊急整備が計画され、平成元年には『高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールトプラン)』が策定された。一方、このゴールドプランに基づく、市町村・都道府県の老人保健福祉計画の作成がすすむにつれ、将来の福祉サービス体制や地域福祉の体制などを改めて再検討する機会ともなり、急速に国民の関心が高まっている。

まさに、こうした社会構造の変化を背景にして、介護保険制度が検討され、平成12年4月に施行された。介護保険制度は、市町村が主体となって運営するものであり、現場第一主義の面からは望ましいものであるが、制度運用や利用者保護の面からまだまだ改善すべき面も多いのも確かである。介護保険制度において留意しなければならないのは、行政による「措置制度」という直接的サービス供給ではなく、民間サービス事業者を活用した「疑似市場主義」を採用したため、民間事業者が競争に勝つためにコストを優先した場合、介護の「サービスの質」が低下する危険性があることである。また、介護対象者は高齢で、さまざまな症例・障害を複合的に持つため、制度上の手続きや実際の現場での介護サービスにおいて多くの混乱をもたらしたことが報道されている。したがって、「声を出しにくい」立場にあるサービス利用者が不利益を被らないように、制度上の改善を進めるだけではなく、制度に隠れた実態面のさまざまな課題を解決していくために救済・改善措置をとることが必要となるのである。そのため、本調査研究では、介護保険の相談及び苦情処理体制について分析検討していくものである。

 

(1) 介護保険法の成立と経緯

平成6年に出された『21世紀福祉ビジョン―少子・高齢社会に向けて―』(高齢社会福祉ビジョン懇談会)は、「今後の高齢者の介護ニーズの増大・多様化に応えていくため、施設サービスと在宅サービスを通じて目標水準の思い切った引上げを行う」等を骨格とする『新高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)」』の策定と、「国民誰もが、身近に、必要な介護サービスがスムーズに手に入れられるシステム」の構築を提言した。

そして、公的介護保険の導入が公に検討されたのは、平成6年9月に社会保障審議会が発表した『社会保障将来像委員会第2次報告』で、「当面の基盤整備は一般財源に依存するにしても、将来的には財源を主として社会保険料に依存した介護保険制度を導入する必要がある」と提言された。さらに、同年12月『新たな高齢者介護システムの構築を目指して」(高齢者介護・自立支援システム研究会)でも、新介護システムの方策として、「社会保険方式」に基礎を置いたシステムが最も適切であるとされた。

 

 

 

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