4] オンブズマンの権限
オンブズマンの職務又は職責は、統治者やその指揮を受ける官吏の行為又は政策決定に監視の光を当てることである思う。統治される者(国民)の統治者への服従の度合いが高ければ高いほど、汚職や不正行為がはびこり、望ましくない状況になる。オンブズマン制度は、このようなことを未然に防ぐという意味で非常に重要なものである。オンブズマン制度が有効に機能することによって、行政側と市民の双方に、政策の決定等が法律に基づいて行われ、公正かつ合理的に実施されているという確信を与えることになるのである。
5] インフォーマルな処理
オンブズマンがその職権を行使する場合、権限を楯にとることなく、説得に際してインフォーマルなやり方を取り入れる度合いが高ければ高いほど、申し立てのあった行政上の行為を是正することが容易になり、行政機関の側にも非常によい効果をもたらすことができる。勿論、是否の指摘をする必要はなく、むしろ救済策に焦点を当てるということになる。このオンブズマンの手続は、従来型の対審構造の司法手続よりもずっとソフトで簡略化されたプロセスということになる。
6] オンブズマンの「監視の目」
オンブズマンの「監視の目」は、権力の側(統治する側)に対して脅威あるいは妨害になるというものではなく、適切かつ公正で責任のある行政執行の動機付けを与えることになり、そのことによって、民主主義がより公正にかつ責任ある形で機能することを促進するものである。この監視の目は、政府側と国民の双方にとって公正に機能していると信じており、もし、公正に機能している政府であれば、監視の目を恐れる必要はないのである。
(3) ソウ氏の発言
ソウ氏は、『オンブズマン:公衆(国民)どのように奉仕すべきか』と題する講演の中で、香港のオンブズマン事務局では、「苦情を申し出ることができるのは、市民に与えられた権利である」ということを市民自身に認識してもらうため、普及・啓発活動の必要性を重視し、次のようなことを行っているとの報告がありました。
ア 講演会やセミナーによる普及・啓発活動。
イ 小・中学校でオンブズマン制度について教えるための教材の作成並びに教師のための指導書の作成。
ウ アニメーション・キャラクターによる公共広告の作成とテレビ放映。
このアニメーションは、オンブズマンの代表の番犬とか、一般市民の代表としての悩めるカエル君とか、公共機関の代表としての動物たちが出てストーリーを構成している「オンブディーズ(オンブズ村の仲間たち)」と呼ばれる広告。
さらに、香港のオンブズマン事務局では、市民が苦情を申し出易い行政風土を醸成していくための試みとして、苦情の対象となった行政機関が如何に改善に努めたかを評価し、その評価に値する政府機関を表彰する「表彰制度」を設け、他方、苦情の申出人に対しては、申出人から苦情を言って頂いたことが、行政の改善に役立ったという感謝の意味で「感謝状」を授与することとしている、ということも報告されました。