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次に1994年、ニュージーランドのタウポでの第14回オーストラリア太平洋地域オンブズマン会議において、全国行政相談委員連合協議会会長である鎌田理次郎氏から日本の行政相談委員制度について、非常に詳細な説明をいただいた。

両氏のお話を伺って、これは(日本の行政相談委員制度は)、我々の国における治安判事の役割にも似たものというふうに私は印象を受けた。治安判事の制度は、イギリスで800年くらい前から存在している歴史を持つものであるが、私は、治安判事の役割がオンブズマンのシステムの中に適合してゆけるものであると考えた。

南オーストラリアには約7,000名の治安判事がおり、多くの治安判事はフォーマルなトレーニングを受けている。つまり、この人達は、オンブズマンの権限を委任される人になり得る適性を備えた人達である。それぞれの地域社会において、人々が近づきやすい、アクセスが常にとれる人達である。この人達にオンブズマンとしての仕事を委任する「判事アクセス委託計画」と呼ばれるものを進めており、現在、50人ほどの判事の方々がオンブズマンの仕事をしている。

 

そして、ビガノフスキー氏は最後に「現代に生きるオンブズマンとして、将来の方向をさぐるという非常に大きな課題があるが、その一つの方策として、世界に展開するオンブズマンの経験をそれぞれ集合させる、持ち寄るということもあると思う。また、各社会には、既存のあるいは伝統的な社会正義に対するアクセスの方法はあるわけで、それをオンブズマンの役割と繋げていくということも考えられる」と述べられましたが、氏が、我が国の行政相談(委員)制度をヒントに南オーストラリアのオンブズマン制度の改正に取り組まれたことは正にこの理念を実現されたものであり、敬意を表したいと思います。

 

(2) エルウッド氏の発言

エルウッド氏は、『ニュージーランドにおけるオンブズマンの現状と課題』と題する講演の中で、いわゆる伝統的なオンブズマンの概念、権限等についてお話になりましたのでその要点をご紹介させていただきます。

1] オンブズマンという名称

ニュージーランドに、初めて女性のオンブズマンが任命されたとき、女性がどのようにして「マン」になれるのかという質問を受けたが、「オンブズマン」は、「オンブズ」と「マン」を足したものではなく、一語で市民の擁護者(プロテクター)を意味するものである。

2] オンブズマンの概念

オンブズマンの概念の起源は、コーラン(イスラム教の教典)に遡り、1809年にスエーデンにおいて再定義されたものである。このオンブズマンの機能は、不服の申立に対し、審理し、決定を下すという裁判所的なものではなく、国民から請求のあったものについて調査をし、拘束力のない勧告を行う機関である。

3] オンブズマンの職権

オンブズマンの職権は、対立して紛争中の両方の当事者に対して、どちらか一方が勝ったとか負けたとかいうことを知らせるものではなく、両方に妥当な解決策を受け入れてもらうために説得をするというものである。

 

 

 

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